小林旭と浅丘ルリ子が“世紀のツーショット”と呼ばれる理由

――数々の芸能スクープをモノにしてきた芸能評論家・二田一比古が、芸能ゴシップの"今昔物語"を語り尽くす!

『女優浅丘ルリ子』

 先日、小林旭と浅丘ルリ子がデュエット曲発表の会見に出席した。若い人にはピンとこないかもしれないが、小林・浅丘のカップルはかつての"三浦友和・山口百恵"、"郷ひろみ・松田聖子"、"近藤真彦・中森明菜"といったカップルに相当する。つまるところ、世紀のカップルのツーショットだったわけだ。小林と浅丘は日活全盛時代の半世紀前、40本を超える映画で共演。石原裕次郎さんと共に日本映画を支えた。

 共演をきっかけとした交際は今も昔も変わらない。小林と浅丘はやがて恋仲となり事実婚状態だったという。もっとも著者も後に日活の人から聞いた話で、恋仲の真っただ中だった当時は知らない。俳優がスターだった時代、今のようにワイドショーもなければ芸能レポーターもいない。芸能マスコミは発達していなかった。「明星」や「平凡」といった芸能機関誌的な雑誌があっただけで、一般人は二人の関係など知る由もない。仮に知っていても報じることもできない。芸能人にとってはありがたい時代だったかもしれない。

「浅丘は結婚を考えていたようでしたが、旭さんは裕次郎さんと並ぶ日活の看板スター。結婚するのは世間が許さないと考え、結局、浅丘さんをふった」と旧日活関係者から聞いた。さらにこう話していた。

「失恋した浅丘さんを慰めたのがきっかけで石坂浩二と恋仲になり、結婚することになった(後に離婚)。芸能界って実に狭い世界の中で恋がうごめいているのがわかるでしょう」

 昨年から小林が座長を務める舞台に「出ないか」と小林が声をかけ浅丘が快諾。別れた男女が長い年月を経て、50年ぶりの共演を果たした。この二人の関係は男と女の仲を超越した「盟友」とでも呼んだらいいのだろうか? その小林・浅丘の舞台が盛況と聞く。松方弘樹も共演。懐かしい顔が並ぶ。最近、歌謡界を席巻する同窓会コンサートと同じ仕組みだ。

「かつて芸能界で一世風靡した人も年を取れば人気も仕事も減るのは自然なこと。一人でコンサートをしても客はたいして集まらないが、歌手が組んで一緒に出れば、それぞれのファンが集まり会場をいっぱいにすることができる。見に来る人もかつて夢中になった歌手を懐かしむような中高年が主体。お目当ての歌手は一人でも懐かしい歌が聴けると"オマケ"みたいなお得感がある。今の時代は多少の金と時間的な余裕のある中高年にスポットを当てることが商売に繋がる」(音楽関係者)

 それにしても久しぶりに登場した小林。すでに75歳になるが、未だにスターのオーラが出ている。小林を見ていると、今の芸能界にスターと呼べる人が果たしているだろうか?という疑問がわいてくる。

「今の芸能人は総じてこじんまりしてスケールが小さくなった。スターは仕事だけでなく私生活もスターらしかった。一般の人とは違う世界に住んでいるからこそのスターという自覚があった。それを象徴するのが遊びだった」と旧知の映画関係者も懐かしがっていた。

 芸能人の車といえばベンツなど欧州車が今の時代の主流だが、小林の時代はアメ車。リンカーン、キャデラックといったバカでかい車がステータスだった。それはハリウッドスターに影響を受けたものだろうが、調布にあった日活撮影所には見たこともないようなアメ車が、まるでモーターショーのように並んでいた。事情通は「あの車は裕次郎さんのだ」と知っていた。車によって裕次郎さんが撮影所に来ていることを確認したという。

 その車が夜になるとそのまま銀座に移動する。小林だけでなく二番手、三番手の役者もアメ車で乗り付ける。店の前にずらっと並ぶ外車の列。それも大半は運転手付き。一見、「危ない人たちの集まり」と勘違いしそうだが、日活スター御一行向様である。並び方にも芸能界の厳しさがある。店に一番近いところに小林。以下、ポスターの並びと同じ順に並ぶ。下の者は店からはるかに遠い位置に止めるしかない。でも、凄いのはどんな店に行こうとも支払いは主役の小林。

「小林さんの号令で集まるのだから、支払いが割り勘だったら若手役者のギャラで高級クラブは無理。来るわけがない。すべて払うことがスターの象徴でしたね。豪快に飲み金を使う。そうやってチーム小林の"和"を作ってきた面もあります。古き良き時代の話ですが、今の時代も芸能人には多少はスターらしいことをして欲しいと思います」(前出・映画関係者)

 まさに、温故知新、ということだろう。

ふただ・かずひこ
芸能ジャーナリスト。テレビなどでコメンテーターとして活躍するかたわら、安室奈美恵の母顔が娘・奈美恵の生い立ちを綴った「約束」(扶桑社刊)、赤塚不二夫氏の単行本の出版プロデュースなども手がける。青山学院大学法学部卒業後、男性週刊誌を経て、女性誌「微笑」(祥伝社/廃刊)、写真誌「Emma」(文藝春秋/廃刊)の専属スタッフを経て、フリーとして独立。週刊誌やスポーツ新聞などで幅広く活躍する。現在は『おはようコールABC』(朝日放送)、『今日感テレビ』(RKB毎日放送)などにコメンテーターとして出演。

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