韓国軍ベトナム虐殺を追う韓国人記者が語る「『売国奴』と罵られても告発を続けたワケ」

――嫌韓ムードが高まる中で、近頃メディアに取り上げられるのが、ベトナム戦争時に行われた韓国兵による民間人大虐殺だ。もちろんベトナム戦争という特殊な状況下で起こった事件だけに、どのような理由があったかを詳しく検証することは必要だが、ここではかつて韓国ではタブーとされていたこの問題に真っ向から立ち向かう韓国人記者に話を聞いた。

韓国のベトナム大虐殺を煽る日本メディアの記事。いくぶん一方的な記述が見受けられる。

 従軍慰安婦問題に対して、日本のメディア側から度々持ち出される反論がある。それは、「ベトナム戦争で現地民間人を虐殺した韓国に、日本を歴史問題で責める権利はない」というものだ。

 今年6月3日付の産経新聞WEB版には、「韓国のベトナム大虐殺を告発する 歴史を悪用する報い」と題した記事が掲載され、その残虐ぶりに怒りをぶつけている。同様の論は保守系の書籍、新聞、雑誌などで幅広く見受けられる。

 もっとも、本来であればこの2つの問題は、日韓の間にある歴史問題ではなく、双方とも個別に解決されていくべき問題。日本政府も韓国政府も、国家犯罪に対しては真摯に受け止め、真相解明、解決に尽力するべきだろう。

 さて、ここでは、過去にベトナム民間人虐殺を韓国で告発したジャーナリストに話を聞いた。なかなか進まない、従軍慰安婦問題を考える一助としてもらいたい。

韓国経済を成長させたベトナム派兵で虐殺が

 まず、韓国軍のベトナム派兵について、もう少し詳しく解説しよう。韓国で軍事独裁政権を率いた朴正煕大統領は、政権に就いていた1964年からベトナム戦争への派兵を開始。73年までの約8年で延べ32万人をベトナムに派兵した。このベトナム派兵で、韓国が得たものは大きかったという。

「韓国が海外に派兵したのは、ベトナム戦争が初めて。当時、苦戦していた米軍に恩を売った形となったため、削減政策を進めていた在韓米軍の規模を維持させることができました。また当時、韓国の独裁政権は日韓協定を強行的に結ぼうとしていましたが、これに対する政権批判をそらすことにも成功しています。ベトナムの戦闘部隊の派兵が本格化した65年以降には、膨大な外貨の獲得にもつながり、後の韓国高度経済成長への契機になったといえます」(韓国の記者)

 軍事独裁政権下、ベトナムに派兵された韓国軍兵士たちが、国益をもたらした英雄として称賛された。さらに、米軍の枯れ葉剤の後遺症に苦しむ元韓国軍兵士やその家族も多く、ベトナム参戦兵は被害者でもあるという風潮が一般的だった。その社会の認識に変化をもたらしたのが、90年代に起こった民主化だ。言論の自由が徐々に拡大し、それまで蓋をされていた国家犯罪にも、メスが入ったのだ。

 そんな中で、週刊誌「ハンギョレ21」は99年5月から、ベトナムに派兵された韓国軍による民間人虐殺を告発する記事を世に出した。これは、韓国内で、この問題に言及した初めての記事となった。

 99年当時、記事を執筆したハンギョレ新聞(週刊誌と同じ版元)の女性記者ク・スジョン氏は、そもそもなぜ、この問題を韓国内で告発しようと思ったのだろうか?

「当時、学生だった私は、入手したベトナム政府の資料の中に、南ベトナムでの韓国軍による虐殺の実態を記したものがありました。その時まで、その事実をまったく知らなかったので、私は信じられず、とても驚きました」

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