ボールと一緒にカネも動く!? 統一球問題から露呈する球界とスポーツメーカーのオイシイ関係

――統一球問題で揺れたプロ野球2013年シーズンが終わり、14年シーズンが幕を開けた。しかし今年もまたミズノ社製の統一球で反発係数の超過が認められ、開幕早々NPB側が釈明に追われる事態になっている。なぜこうした問題が起きるのか? 野球用具の利権を独占したいメーカーの企みと、見返りとしての“カネ”を求める球界側の利権事情を追う──。

「統一球」「飛ぶボール」「飛ばないボール」「違反球」「エラー球」「適合球」──。ひとつのボールをめぐって、これだけの呼び方が誕生してしまった、日本プロ野球の統一球。結局どれが正しいボールなのか、なにがなにやらである。

 2011年シーズンから日本プロ野球に導入された統一球だが、次から次へと問題が頻出し、ファンの間でもしらけムードが漂っている。もともと「国際試合に対応できるように、国際球に近いボールを使用すべし」との加藤良三・日本プロフェッショナル野球機構(NPB)コミッショナー(当時)の大号令で導入されたもの。しかしそれによるホームラン数激減により、ファンや選手に大きな戸惑いをもたらした。そして13年6月には、こっそり統一球内部のゴム芯の配合を変えて飛びやすく仕様変更していたことが公表され、それまで使用していた統一球は、NPB自ら設定した基準値を下回っていたことも明らかになった。

 この騒動では、NPBの下田邦夫事務局長が反発係数を変更するようにミズノ社へ指示した上で、変更の事実を伏せるように働きかけていたことも発覚。このスキャンダルは結局、下田氏と加藤良三氏が役職を辞任するという騒動に発展した。これで統一球での運用体制も改善されるかと思いきや、今シーズン開幕直後の4月10日には、今度は基準値を上回っていたことが発表されるなど、ひとつのボールをめぐって二転三転。導入から4年目を迎えた今も、ボールを取り巻く問題がなお続いている。

 今年に入ってからのボールに関して、統一球を製造するミズノ社は「ボールの芯に巻く毛糸に含まれる水分量が、社内品質管理目標値を下回るものが多く使用されていた。含水率が1%低くなると、重量と大きさを合わせるために毛糸が約1メートル長く必要になるため、よりきつく巻いた結果、ボールが硬くなり、その分、反発係数の数値が高くなった」と発表。すぐに改善策と検査方法が改められ、4月29日からは「適合球」が使用されている。これまでと比べると、今年の打者成績は軒並み好調な印象だが、この適合球になってどう変わるかは、これからのシーズンに注目していくほかはない。

 しかしそもそも、なぜ統一球の製造をミズノ社が担うことになったのか? もともとミズノ社製のボールは、各球団がそれぞれ独自にボールを採用していた統一球時代以前から、飛びやすいボールとして知られていた。00年代前半にミズノ社製のボールを採用する球団が増え、セ・パ8球団でミズノ社製のボールが使用されていた03年には合計で1987本、04年には1994本のホームランが記録されている。すると今度はあまりにも飛びすぎることが問題視されるようになり、ミズノ社は05年にそれまでより反発係数を抑えた飛ばないボールを製造。この年は1747本、06年には1453本までホームランが減少した。それでも品質の良さからか、統一球導入前の10年シーズンには、全球団がミズノ製のボールを採用(ヤクルトと楽天はゼット、阪神はゼット・久保田、ロッテはアシックスと併用)した。

 統一球が導入された理由は、前述の加藤コミッショナーの発言に端を発している。国際試合に向けてボールに慣れる必要があるというなら、国際試合やアメリカ・メジャーリーグ(MLB)で使用されているローリングス社製のボールで統一すれば、それで済む話であるような気もする。しかし、ローリングス社製のボールは、縫製や大きさにばらつきがあり、品質が一定しないという見方が一般的だ。そこで、国内シェアが最も高く、品質も安定し、アテネ五輪の野球競技でも使用された実績のあるミズノ社にボール製造のお鉢が回ってきたようだ。ただし、出来上がったボールは縫い目の高さも表面の革の質も国際球とはまったくの別物といってもいいもので、事実それまで2連覇していたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)でも、導入後の13年大会では準決勝敗退の憂き目に遭っている。

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