ゴーストライター起用は正義か悪か!? 音楽業界では当然の事実?ゴーストの「是非」を探る

――楽譜が読めず、明瞭に聞き取れる耳を持ち、日本を感動の渦に巻き込んだ佐村河内守には、ゴーストライターが存在した。業界で脈々と続いてきたゴースト文化とは。

(絵/河合 寛)

 あの日、何気なくつけたテレビの画面にギョッとしてしまったのは、そこに、本来は見えないはずの幽霊の姿がはっきりと映っていたからだった。去る2月5日、「クラシック界の風雲児」として脚光を浴びていた佐村河内守氏を、世間的には無名の音楽家・新垣隆氏が「私は18年間にわたり、彼のゴーストライターを務めた」と告発した。また、全聾であるはずの佐村河内氏の耳が「実は聞こえる」と暴露したことにより、“現代のベートーベン”という化けの皮は剥がされてしまったわけだが、同時に、ゴーストライターという都市伝説のように囁かれてきた音楽業界のタブーが白日の下に晒され、人々はある疑念を抱くようになっただろう。つまり、「実は多くのアーティストもゴーストライターを使っているのでは?」と。一部のミュージシャンにとっては、新垣氏の姿は死神に見えたかもしれない。

 そもそもゴーストライターとは、佐村河内氏の事件からもわかるように、「実際に制作をしたにもかかわらず、作品とはまったく無関係」と見なされる姿なき制作者を指す。これは音楽業界に限らず、小説家や脚本家など、あらゆる分野で共通する職種であるが、こと音楽業界に関しては、プロデューサー・作詞・作曲・編曲など、そのゴーストの存在場所は広範囲にわたる。「ゴーストの存在は、日本の音楽業界では当たり前です」。とあるレコード会社関係者は話す。

「佐村河内氏の一件は、クラシックの分野で起きた事件でしたが、歌謡曲からロック、クラブミュージックなど、さまざまなジャンルで、ゴーストライターは重宝されている。もちろん、商品にそのゴーストはクレジットされず、アーティストの名前で(作詞作曲などが)クレジットされます」(レコード会社関係者A氏)。

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