本屋大賞のシステム
本誌ではなんども報じてきたとおり、書店員が投票する、というその投票システムにはかねてから批判があった。これをうけて、運営サイドも12年より2次投票では、すべての作品を読んでからベスト3を選ぶ、と変更になった(1位は3点、2位は2点、3位は1.5点となる)。
発表前、『村上海賊の娘』は、発売4カ月で刷り部数(上下巻で)20万部突破だが、売上は十数万部ほど。伸びるのか!?
出版界の春の恒例となった本屋大賞が、今年も開催された。
8日の授賞式では、昨年大賞をとった百田尚樹が冒頭から「去年も言いましたが、本屋大賞は直木賞の次にいい賞です!」と、昨年とは真逆の、直木賞への意欲を見せるようなスピーチを披露し、会場をわかせたが、第1位は、総得票数163で、和田竜の『村上海賊の娘』(新潮社)。ノミネート前から刷り部数で20万部を超えており、文壇筋の評判も良く、本命視されていた作品だ。
「和田さんはイケメンで、すごく気さくな方。その上同作は、吉川英治文学新人賞も受賞したばかり。ランキングの発表後、同作のメディアの注目度は一気に上がった。毎年の例にならい、『村上海賊~』も60万部ほどまで刷ってるようだ」(出版社営業)
セールスの面ではほぼ直木賞と立場が逆転した印象のある本屋大賞だが、その運営スタイルには疑問を呈する声も上がっている。
『本屋大賞』
書店員が選ぶ文学賞として2004年に開始された文学賞。本を売るという目的のため、受賞作が決定してから1カ月の期間を置いてから、発表となる。
そんな今年の2月24日、人気作家の海堂尊が自身の公式サイトで『読まずに当てよう、本屋大賞。』【1】という記事をアップ。その内容は、作家の立場から見た本屋大賞への苦言だった。
「海堂さんはそもそも『本屋さんが一番売りたい本』という本屋大賞のキャッチコピー自体に異議を唱える。1位になればいいけれど、2位以下の作品は『本屋さんがそんなに売りたい本ではない』というメッセージが発信され、セールス面での討ち死にを招いているとしています。実際ノミネートされただけでも売れたのは数年前までの話です。今年は、ノミネートで動いた、というほど売れてる印象はないです」(同)
また海堂は、本屋大賞の候補作家の偏りも指摘。ノミネート回数の多い伊坂幸太郎、小川洋子、三浦しをん、百田尚樹、有川浩、万城目学、森見登美彦らを「神7」【2】とし、彼らの作品を優遇することで、書店員の選んだ作家は素晴らしいのだという印象操作を行っていると主張する。