愛人を女優にする豪腕映画会社社長、無毛覚悟で股間にガムテープを貼って撮影強行――ロマンポルノ

――数々の芸能スクープをモノにしてきた芸能評論家・二田一比古が、芸能ゴシップの"今昔物語"を語り尽くす!

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 日活全盛時代のスター・小林旭に「舞台を降板させられた」とフェイスブックで非難した東てる美。同じ日活出身ながら東は、アクション映画からポルノに路線変更した女優である。

「二人は同じ日活の先輩・後輩に当たりますが、共演はない。東は今回、小林が座長を務める舞台に代役で出演予定だったが、稽古の段階で小林に執拗なイジメを受け降板を余儀なくされた。あまりにひどいイジメにたまりかねた東は、『人権侵害』とまで痛烈に非難。まるで"仁義なき戦い"のようです」(舞台関係者)

 映画で監督と出演者がもめて降板するケースはあるが、舞台で座長と脇役とのもめ事が明るみになるのは極めてめずらしいこと。関係者は話をこう続ける。

「ポルノ出身ながらテレビや舞台で確実に成長し、演技派女優として評価されている東と小林は気が合わない。まして、舞台経験は東の方があるし演技もうまい。舞台ともなれば、見る人によっては演技の差が歴然とわかるケースもある。最初から無理のあった共演だった。普通なら理由をオブラートに包んで降板するものを、気の強い東は"許せない"と白日のもとにさらし、喧嘩を売った。イジメは事実だけに、小林も反論は難しいのでは」

 今やアンダーヘアーは解禁されAV全盛の時代。ロマンポルノを知らない世代も少なくないだけに、ポルノという言葉の響きはなんとも新鮮な感じさえする。

 ロマンポルノの前身はピンク映画と呼ばれた独立映画だった。当時、ピンクの雄と言われたのが「大蔵映画」。数々の女優と名作を残した老舗の映画会社であるが、その社長には有名なエピソードが語り草となっている。紹介しよう。

 ある会見に臨んだ社長に愛人問題の質問が飛んだ。間髪を入れず社長はこう答えた。

「私は女優を愛人にした覚えはない。愛人を女優にしただけだ」

 マスコミは二の句を告げなかったという。
 
 今に置き換えれば、事務所の女優を事務所のスタッフが愛人や恋人にするようなものだが、「商品に手を出すのは御法度と言われるが、恋人を女優にしたのならば問題なし」という論理だ。

 ロマンポルノもスタート時は順調だった。若者から中高年まで映画館内は異様な熱気でムンムンしていた。なかには前の座席でしきりに自分のものをしごき、悦に入っている者もいたほどだ。男性誌のグラビアも映画と連動してポルノ女優が誌面を飾った。

 やがて、人気ポルノ女優も誕生した。団地シリーズの白河和子や和装ポルノの第一人者と言われた宮下順子。東てる美もその一人。現在、一般映画で活躍している監督のなかにも、若い頃はポルノを撮っていた人も少なくない。相米慎二や村川透がそうだ。

 無論、彼女らにはマスコミの取材も殺到した。記事にするだけでなく、個人的に撮影現場に興味があったからというのが記者、カメラマンの本音。真剣にセックスシーンを撮る現場は今にして思えば滑稽だった。カラミのシーンになると全裸の男女が登場。二人とも股間だけ大きな肌色のガムテープで隠しているだけ。

「張る時は簡単にできますが、剥がす時が大変。バリバリと音がして痛い、痛い。毛もかなり抜ける。このまま続けたら無毛になるかと心配したぐらい。カラム相手が好みの女優だったり、あまりに感情移入すると本当に勃起しそうになる。それは苦しいものだよ。見えなきゃいいだろうと、面倒な人はしなかった。女優にもしない人もいた。前バリなし同士がカラむと、先だけ入ったりすることもあった」

 そんな話を男優から聞いたことがあった。

 撮影現場も壮絶だった。男優が続ける。

「今、挿入された瞬間だぞ。そんな顔になるか、もっと喜ぶ表情だろう」と監督の声が飛ぶ。セックスシーンはポルノ映画の生命線。いかに本当にしているように見えるかが大きなポイントとなる。何度も撮り直しを要求されていた。そうして本当にいいポルノ映画になる。いいポルノ映画とは『いかに見ている人を勃起させるかにある』と某監督は言っていた。確かに、それがポルノ映画の使命。

 ポルノブームもその後AVの出現により衰退していく。行き場を失ったポルノ女優たち。一般映画へと転じようとするが、壁は高かった。映画関係者が回顧する。

「やはりポルノとはいえ裸になっている女優は一般の女優よりも下に見られていた。なかには共演を拒否する人もいたほど。結局、裸のシーンが必要な時に端役として呼ばれる程度。ポルノの時は演技よりも裸とセックスシーンが受ければいいが、服を着たら演技力を問われる。大半の女優は引退を余儀なくされたが、演技派女優として立派に開花したのは、東てる美と美保純ぐらいでしょう」

 先輩にも堂々と喧嘩を売った東。その低辺にはポルノ女優から這い上がったプライドがあるように見える。

ふただ・かずひこ
芸能ジャーナリスト。テレビなどでコメンテーターとして活躍するかたわら、安室奈美恵の母顔が娘・奈美恵の生い立ちを綴った「約束」(扶桑社刊)、赤塚不二夫氏の単行本の出版プロデュースなども手がける。青山学院大学法学部卒業後、男性週刊誌を経て、女性誌「微笑」(祥伝社/廃刊)、写真誌「Emma」(文藝春秋/廃刊)の専属スタッフを経て、フリーとして独立。週刊誌やスポーツ新聞などで幅広く活躍する。現在は『おはようコールABC』(朝日放送)、『今日感テレビ』(RKB毎日放送)などにコメンテーターとして出演。

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