過激すぎて日本語に移植できないタブーなき「洋ゲー」のアブない世界

――ハリウッド映画並みの製作費を投じ、リアルな表現を追求する海外ゲームメーカーが製作する「洋ゲー」。だが、一部にはあまりに過激な内容のためか、日本語版がリリースされてない作品も存在する。クオリティの高さでゲーム市場を世界的に席巻してきた日本産ゲームは、その魅力に対抗できるのか?

専門ショップで販売される洋ゲー。

 ソニー・コンピュータエンタテインメントの新世代機となるプレイステーション4(PS4)が、2月22日、満を持して発売された。PS3から実に7年の時を経た今回の発売、大型量販店では行列ができ、熱心なゲームファンが満面の笑みで本体の入った箱を掲げる姿が見られた。だが、そもそも北米では13年の11月15日に発売されており、アメリカより3カ月以上遅れての発売。PS3が日本先行発売だったことからも、もはやゲームの世界市場はアメリカ中心であることを証明したかのような形になった。

 ハード機の新規登場と同時に発売されるゲームソフト、通称ローンチタイトルを見ても、洋ゲーばかりが目立つ。本体を購入した多くの人が同時に購入したソフトとして挙げた『バトルフィールド4』『キルゾーン シャドーフォール』『コールオブデューティゴースト』『アサシンクリード4 ブラックフラッグ』などはすべて外国産のタイトル。国産としては、『龍が如く 維新!』『真・三國無双7猛将伝』『信長の野望・創造』などがあるが、実際に量販店などの並べ方を見ても、洋ゲーのほうが大々的に展開されており、国産勢は姿が霞んで見える。

 秋葉原のゲームショップ「トレーダー本店」輸入ゲーム仕入れ担当の太田英利氏によると、現在の洋ゲーを買いに来るファンは、30代以上の男性が中心。この店は、ローカライズ(日本語版への移植)ではない、北米版のゲームも取り揃えており、熱心なファンが買い求めに来るという。

 かつて世界を制覇した日本産ゲームに取って代わる勢いの洋ゲー。いつから世界のゲーム事情はこのようになってしまったのだろうか?

 まずは業界の動向に明るいゲームジャーナリストの新清士氏に聞いてみよう。

「(ハードの性能が高まったことによる)ゲームの制作費の高騰が極まったことが原因でしょう。13年にアメリカのロックスター・ゲームス社から発売された『グランド・セフト・オートV』(GTAV)は、260億円もの制作費をかけています。映画『アバター』の制作費は200億円近くとされていますから、ハリウッドの超大作もさらにしのぐほどのお金がつぎ込まれているわけです」

 GTAシリーズは、アメリカのロサンゼルスに似た架空の街を舞台に、広大なマップを自由に行動し、通行人を襲ったり、強盗をしたり、さらにはヘリを奪ったり、FBI(がモデルの機関)に爆弾を仕掛けたりといったなんでもありのクライムアクションゲームだ。リアルに再現されたアメリカの市街地を舞台に、あらゆる犯罪を疑似体験できることが人気の秘訣。そのリアルな描写を突き詰めるために、600人態勢のスタッフで5年もの製作期間をかけ、全世界で3000万本が売れたという。

『GTAV』ほどの製作費をかけてゲームを作れる会社は、もはや日本には存在しないのが現状だが、かつてハリウッド映画ほどの製作費をかけることができないために、邦画の存在感が霞んでいった歴史が、いまはゲームにおいて繰り返されているともいえるだろう。新氏は続ける。

「アメリカでは、GTAシリーズの製作会社であるロックスター社や、『バトルフィールド』などを発売するエレクトロニック・アーツ(EA)社などの一部の会社が巨額の製作費を使って大作を作る一方、それがかなわないメーカーやゲームクリエイターは、インディ系と呼ばれる、大手資本に頼らないアイデア勝負のゲームを作り出しています。一方、日本では、かつてのような大作RPGは非常に作りにくくなり、各メーカーとも急速にスマホやタブレット対応のゲームへと比重を強めています。もはや、いわゆる中規模の作品群のことを指す“ミドルレンジ”は消滅したといってもいいでしょう」

「人間狩り」がテーマの危険なゲーム

過激な描写で物議を醸した『マンハント』と『デッドスペース』のHP。

 ハリウッド映画並みの製作費をかけるこれらの作品が、日本のゲームに比べて際立っているのは、そのリアルな表現とともに、過激な描写にあるといっていいだろう。GTAでさまざまな犯罪が再現されているのは前述の通りだが、戦場での戦闘をリアルに表現した『コールオブデューティ』や『バトルフィールド』などは、FPS(ファーストパーソンシューティング)と呼ばれる、自分の姿は銃と手しか見えないリアルな視点で戦場での戦闘が再現され、オンライン対戦では、世界中のプレイヤーと対戦できる。

 これらのゲームの日本版は、ゲームソフトの倫理審査機構であるCEROによって、18歳未満はプレイ禁止という、もっとも厳しい「Z」のレーティングが付けられている。それでもなお、ローカライズと呼ばれる日本版への移植の過程で、表現を抑えられている箇所があるのだ。そうしてリリースされたゲームについては後述するとして、次はあまりの過激さゆえに日本版の発売すらされていないゲームについて紹介しよう。

 その筆頭が、03年にロックスター社から、プレイステーション2でリリースされた『マンハント』である。『洋ゲー通信AirPort51』(エンターブレイン/当時)の共著があり、ファミ通.comで「DIARY OF A MAD GAMER」を連載中の、マスク・ド・UH氏はこう話す。

「『マンハント』はタイトルの通り、人間狩りをテーマとしたゲームです。主人公は死刑囚なのですが、殺人映画の製作を熱望する大富豪により殺し屋集団が占拠する廃遊園地に放り込まれ、彼の指示に従って彼らを殺していく。このゲームはステルスアクションと呼ばれるジャンルで、主人公は敵に見つからないように忍び寄り、背後から襲います。敵はマシンガンなどの完全武装なのですが、主人公は基本的に丸腰。拾ったハンマーや針金を武器として使用します。問題になったのはその殺し方で、背後から忍び寄ってビニール袋で窒息させ、敵が息絶えていく様子などが非常にリアルで、物議を醸しました」

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