――東京五輪開催に向けて、次々と競技施設の建設が計画されているが、それらに対して疑問の声が一部から上がっている。話題となっている「新国立競技場」の裏にも意外な思惑があった──?
(写真/若原瑞昌 D-CORD)
「新しい時代の希望の灯台になるような競技場を作りたい」
2020年開催の東京五輪に向けて建て直される「新国立競技場」のデザイン募集に当たり、審査委員長を務める建築家・安藤忠雄はそう息巻いていた。そして12年に行われたコンペの結果、選出されたのはイラク出身の女性建築家ザハ・ハディドだった。だが、この新築に対しては費用面などで、一部から疑問の声が上がっている。建築家の森山高至もそのひとりだ。建築エコノミストとして日本の建築とそれを取り巻く経済環境を考察している彼は、自身のブログで、この新築がいかに問題であるかについて積極的に発言している。
森山氏は、同ブログにて『新国立競技場の建設コンペをめぐる議論について』というエントリで15回にわたって疑問符を投げている。
「まず、ザハという建築家は、肩書きを見れば、世界最高峰の建築賞・プリツカー賞を受賞しており、建築家としての知名度や“実績”は世界レベル。ですが、かつてザハは建築物として成立しがたい構造ばかりを作ることで有名でした。しかも、一度デザインしたら、自分の意志を絶対に曲げないピュアな芸術家。20年近く前の話ですが、彼女の奇抜すぎるデザインプランを元に、施工業者が現実に建つように設計変更しようとすると、彼女は現実と芸術の狭間で揺れて、涙ながらに変更を拒否するような人です。現在ではザハも年齢を重ね、だいぶ丸くなったようですが、新国立競技場を実現させるために、今後、多くの業者やスタッフが、彼女のこだわりに振り回されることは想像に難くないでしょう」