幼児虐待、獣姦、カニバリズム……密かに過激化するエログロ映画最前線

――“表現規制”が厳しくなる昨今、すっかりその鳴りを潜めてしまった"エログロ"ジャンル。しかし、公開される作品が生ぬるいものばかりになりつつある中、その裏で、製作される作品は過激さを増しているようで……ここでは、エログロ映画の最新事情を追っていきたい。

『ワケありな映画』(彩図社)

 監禁、拷問、虐待、そしてアブノーマルすぎる性的嗜好の数々。「血みどろブシャーから拉致監禁拷問まで! 規制も“なんのその”バイオレンス映画」ではレーティングや規制についてレポートしたが、エログロ映画もまた、過激な描写でモラルの彼岸を表現してきた。映画界で特異な地位を占めてきたジャンルであり、“いかれた想像力”に夢中になるファンも少なくない。

 一方でこうした映画は、社会的な批判にさらされることもしばしばだ。ホモセクシャル、スカトロなど過激な性的表現で数カ国で上映禁止処分を受けた『ソドムの市』【1】や、死体愛好という主題で倫理的議論を呼び、ドイツでフィルム焼却処分になった『ネクロマンティック』【2】。また、少年少女へ暴力性がはびこることが懸念され、一部の国で上映禁止になった『Mikey』【3】『ベーゼ・モア』【4】など、問題視されるエログロ作品は枚挙にいとまがない。近年では、09年に公開された邦画『グロテスク』【5】をはじめ、『A Serbian Film』【6】『The Bunny Game』【7】などが、その過激すぎる映像描写のため、世界数カ国で公開禁止となった。しかし、そもそもこのエログロ映画に対する“上映禁止処置”は、どのようにして働くのか。

「日本では、法律的にエログロ映画が上映禁止となったケースは聞いたことがない。公開前から部分的に自主規制される場合がほとんどです」

 そう話すのは、映画配給会社トランスフォーマーでプロデューサーを務める叶井俊太郎氏。過去に『八仙飯店之人肉饅頭』(04年)、『ムカデ人間』(11年)など、数々のエログロ問題作の配給に携わった人物だ。

「映画がフィルムで取引された頃は、税関に保税試写室というものがあった。そこに映画倫理委員会(以下、映倫)の人が来て、『ここは切んなきゃだめ』『ボカさなきゃだめ』という指示が直接ありました。現在はネットでデジタルデータをやりとりするのでそのようなことはありませんが、映画館側は、観客や警察とのトラブルを避けるため、映倫で審査してない作品は上映しないというのが一般的です」(叶井氏)

 この審査で映像表現に問題があるとした場合、映倫と製作・配給サイドで相談しながら規制の落としどころを決定し、修正・編集作業を行う。ただ、作品全体で上映が難しいと判断された場合、映倫側で「審査拒否」の対応が取られることもある。これは、映画に対して責任を一切負わないという意思表示。映倫には法的権限はないものの、映画館側は「審査拒否」作品=トラブル付き案件と判断し、上映を敬遠する。 結果、映倫の審査を避ける訳にはいかない配給側は、買い付けの段階で審査を想定しながら作品を選ぶことになる。

 例えば、全編にわたって性器が露出しているような作品は、カットやぼかしで編集まみれになるのが明らか。昨年公開された、シャルロット・ゲンズブール主演の『Nymphomaniac』はその代表的な例だろう。色情症患者たちを描いた同作は、国際的に注目を集めているものの、性的シーンが多すぎるため、日本では公開にこぎ着けることができるかどうか、業界内で話題となっている。しかし、こうした“性器のモロ出し”表現以外については、「血みどろブシャーから拉致監禁拷問まで! 規制も“なんのその”バイオレンス映画」でも述べた通り、その基準は非常に曖昧だという。あくまで観客の反応次第なのだ。

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