【映画ジャーナリスト/大高宏雄】風通しの悪い映画の流通事情変えるための勇気ある判断を

大高宏雄(おおたか・ひろお)
1954年、静岡県生まれ。映画ジャーナリスト。キネマ旬報で「大高宏雄のファイト・シネクラブ」、毎日新聞で「チャートの裏側」などを連載中。主な著書に『映画業界最前線物語』(愛育社)、『仁義なき映画列伝』(鹿砦社)ほか。

(絵/小笠原 徹)

 日本映画界の配給・興行について私見を述べたいと思います。今の日本映画界は東宝1社のみが多くのヒット作を生み、残されたパイを他の映画会社や配給会社が奪い合っているいびつな構図になっている。これでは決して全体のパイは広がっていかず、縮小していくだけです。この状況を打破するには、とにかく東宝以外の会社が企画力、宣伝力を高めてヒットを生み出すこと。ほかの会社に力がついていけば、状況は変わっていくものです。

 昨年でいえばギャガ配給の『そして父になる』は、ベストセラー小説が原作でもなくテレビドラマの劇場版でもなかった。福山雅治主演で、フジテレビが幹事会社ですが、ギャガと是枝裕和監督は前作の『奇跡』(11年)から組んでおり、ギャガの製作ノウハウが活かされた位置付けにある作品です。興収32億円と、昨年の実写映画では上位の結果を残しました。是枝監督の実績、テーマ性、カンヌ映画祭での受賞効果があってのヒットですが、こういう企画に他社も取り組んでいくことが必要です。

 ギャガと共に注目しているのは、企画力のあるアスミック・エース。『ヘルタースケルター』(12年)をヒットさせた手腕をさらに活かしてほしい。ただ、東宝との共同配給が最近は増えており、そこに頼ると会社としての本当の力がつかない。単独配給でのヒットをぜひ目指してほしい。テレビ局映画にも同じことがいえます。テレビ局映画が日本映画界の核にある現状は現状として、そこに頼らずにヒットを生み出すノウハウを映画会社は編み出さなくてはいけません。テレビ局におんぶにだっこでは、力は衰えていくだけです。

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