人類のナゾは音楽で見えてくる! ブラックミュージック専門サイト「bmr」編集長・丸屋九兵衛が”地・血・痴”でこの世を解きほぐす。
『7 Days of Funk』7 Days of Funk
(発売元:Stones Throw)
趣味が高じて形になったものなので、作業に〆切はなく、当初はリリース元のレーベルすら決まっていなかったとか。件のブーツィ・コリンズが参加、いつものブーツィ節(ヴォーカル)を披露している。また、よりマイナーなファンク・バンド「スレイヴ」のスティーヴ・アーリントンもフィーチャー。これはデイム・ファンクの趣味だろう。
怪獣名の欧文表記について考えてみたい。
ガメラはそのままGamera。ラドンは、ちょっとヒネってRodan。しかしゴジラは……Godzillaなのだ。知ってる人も多かろうが。
「ゴリラ(とクジラ)」という命名起源を思い出させる語尾「illa」。神罰のごとき天災(実は人災だが)を象徴する「God」、そして終末をイメージさせる文字「z」の挿入。語感の達人、ルイス・キャロルが生きていたら感嘆したであろう、絶妙な造語センスである。作品自体の知名度と、その語感に心を打たれてか、芸風(?)に取り入れてしまったアーティストまでいる。そう、ブーツィ・コリンズだ。
ブーツィといえば、ジェイムズ・ブラウン全盛期を支えた凄腕ベーシストにして、70年代後半の米音楽界で異臭を放った「Pファンク軍団」の大物。その彼にとって最大のヒット曲は、78年にブーツィーズ・ラバー・バンド名義で発表したBootzillaである。「ブーツィ+ゴジラ」だからブーツィラ。街を破壊するファンク怪獣……ではなく「ねじまき式の怪獣人形」という設定がキュートだが、なんにせよ、このBootzillaの大ヒットによって、アメリカ黒人たちの脳裏には、こう刻まれた。「zilla=ファンク」と。
この刻印が35年の時を経て結実したのが……「スヌープジラ」なのだ。
本連載第1回のテーマは、「人気ラッパーのスヌープ・ドッグがレゲエに転向し、スヌープ・ライオンと改名!」という件だった。それから1年も経っとらんのに、またも改名したのだ、あの野郎は! 「スヌープ・ライオン」にレゲエという命題があったのと同様に、今回の「スヌープジラ」改名が目指すところは――文脈からおわかりのとおり――ファンクである。