――笑顔を絶やさぬ役からシリアスな役まで、いまや映画やドラマで目にせぬ日はない小市慢太郎。彼がエンターテインメントの世界に求めるファクターを探る。
(写真/江森康之)
映画を観る・選ぶ基準っていうのは完全に直感です。そもそも僕の行動原理はいつも勘なので、自分が出演する映画やドラマに関しても勘で選ぶことが多い。でも、直感とは別にその時期や好みに傾倒しているもので左右されることもあって、それは常に変化しているともいえます。
例えば、シリアスなものに興味が向いているときもあれば、すごいエンターテインメント性の高いものに興味が湧くこともある。ただ、一貫してブレていないのは、自分がそのときに「演じたい・観たい」と思うものを選ぶようにしていること。これが、勘ですね。
若い頃は、やっぱり尖った作品や、テーマ性の強い作品、そういったものが自分が多くかかわってきた作品でしたけど、今だとエンターテインメント性の強いもの、笑えるもの、明るいものに興味が湧きますね。一時、サイケなものを欲する時期もあったけど、一周して“やっぱり普通がいい”みたいなね。
今は子どももできて、明るい日常を送れていることもあり、子どもと一緒に観て楽しいものにフォーカスしている部分も大きいですね。
そういう状況もあってか、最近観て一番印象に残っている作品は、『カンフー・パンダ』【1】というドリームワークスのアニメです。子どもと一緒に観ることがほとんどですが、なにしろ1日1回は必ず観てますから。でも、子ども向けの映画かと思いきや、繰り返し観てもストーリーもよくできているし、社会的な風刺も利いている。今のアニメ映画は非常に完成度が高く、生身の役者として悔しいと感じることもあります。映画の中には、人生におけるヒントもちりばめられていて、むしろ子どもより僕が受けている影響のほうが大きいかもしれないですね。
映画の原体験として一番衝撃を受けたのは『スター・ウォーズ』【2】。中学生くらいのときに観て、ただただ圧倒された記憶がありますね。大きなスクリーンに自分が観たことのない世界が広がっている。ストーリー云々よりも、そういった部分に惹かれました。
例えば、宇宙船がまるで実在しているかのように飛んでいる姿やスピード感。僕は映画が放つ魅力は、実はそこにあるんじゃないかと思っているんです。大きなスクリーンの中に入り込み、そこで空間やスピード感を浴びるように体験する。それこそ映画の醍醐味なんじゃないかな。ドラマや自分の生きている世界に近いものもあるけど、「映画館で観る」という行為は特別だと思います。