ヅラ告白したアナウンサーから手塚治虫、赤塚不二夫の影武者まで 各界の"偽装"の違い

――数々の芸能スクープをモノにしてきた芸能評論家・二田一比古が、芸能ゴシップの“今昔物語”を語り尽くす!

『魂の旋律-佐村河内守』(NHK出版)

 衝撃的な事実が判明した。全聾の作曲家として「平成のベートーベン」とまで呼ばれた佐村河内守氏はペテン師だったというのである。「週刊文春」(文藝春秋)誌上でスクープされ、まるで食品偽装のようだが、テレビや新聞をも騙したペテン師ぶりはある種、お見事と言うしかない。

 ペテンを暴露したのは、18年間、佐村河内氏のゴーストライターをしていたという新垣隆氏。NHKまで佐村河内氏を取り上げ、クラシック音楽の世界だけに大問題に発展したが、芸能界に転じると、芸能界にゴーストライターは珍しくない。特にタレント本と言われるものは大半をゴーストライターが書いている。

 著者も何冊か携わったが、間違っても「私が書いた」と名乗りを上げる者はいない。ゴーストライターはタレントから後述筆記を任されて書き、ギャラは基本的に印税を折半する形で支払われる。

 タレントとゴーストライター側の2者には暗黙の契約ができていることであり、一見、世間を騙してもいない。

 滑稽なエピソードがある。

 1984年、アイドル時代の松本伊代が自伝を出版するに当たり、マスコミから「どんな内容ですか」と聞かれると、「まだ読んでいないのでわかりません」と答えた。本人が書いていないことを証明したようなものだが、当時は彼女の天然ぶりをクローズアップさせたユーモアとして処理。別段、問題にもならなかった。

 マンガの世界でも著者本人ではなく、弟子が書いている場合もある。筆者と親交の深かった赤塚不二夫氏(故人)の一番弟子は、「俺よりも絵が上手い」と赤塚氏に絶賛され、よく書いていたのも見てきた。だが、基本的にキャラクターやストーリーは漫画家が考え出したもの。絵が著者直筆でなくとも特に問題はないだろう。

 それでも漫画界にはこんなエピソードも隠されている。

「マンガ界の巨匠・手塚治虫氏は多くのアシスタントを抱えていた。明日のプロを目指す人たちがほとんどでしたが、売れっ子の手塚先生ゆえ、下書きはアシスタントが描く。ところが、長年やっている弟子の中には先生と変わらないほど上手い人が出てくる。すると手塚先生は、上手いアシスタントがでてくると、仕事をさせないようにして、やがて解雇にしていたという話です。先生以上に上手い人が出てきたら、先生の地位が危うくなることを恐れたのかもしれません。マンガ家やカメラマンの世界では、優秀なアシスタントが出てくると潰してしまうタイプと育てる人とに分かれます。これも作家の性でしょう」(元漫画編集者)

 芸能界も実は偽装の世界。俳優、歌手という虚像を売っているのだから、実像と違うのは当然である。プライベートでは顔を隠し、変装するのも実像を隠すため。中でも目は必須。大半の芸能人はサングラスやメガネをかける。

「本人の決め手となるのは目。昔、顔を出すと都合の悪い人の場合、目線を入れた。目を隠すことで本人だとバレにくい効果がある」(芸能関係者)

 今にして思えば、佐村河内氏も普段、濃い目のサングラスをしているのは確かに変だった。眼を隠せば、サングラスを取った時に佐村河内とわかりにくい。黒を基調にしたファッションも然り。メディアに出る時は常に黒なら、普段歩く時は極端に違うファッションにすれば、佐村河内と気づかれにくい。

「耳が聞こえないフリ」もする必要がなく、好きに会話ができる。サングラスを外しジーパンなどの服装で、友人と普通に会話していても、誰もが全聾と思い込んでいるのだから、目の前に本人がいても気づかれなかったと思う。

 ペテン師とはそこまで徹しないと欺けないのだろう。多分、新垣氏がこのままゴーストライターを続けていれば、バレずに済んだかもしれない。しかし、新垣氏は騙し続けることを良心が許さず告白したのだという。

 珍しいケースもあった。本人自ら良心が許さず秘密を明かした関西のアナウンサーがいた。

 元関西テレビのアナウンサーの山本浩之(現在はフリー)は若ハゲでカツラをしてニュースを読んでいた。それをある日、自らカミングアウトしたのだった。担当していた夕方の生のニュース番組。山本は「これまでニュースという真実をお伝えしてきましたが、ひとつだけ真実をずっと隠していたことがあります」と番組内で自らカツラを外して謝罪したそうだ。

「別にウケを狙ったわけではなく、カツラで隠し続けているのが耐えられなくなったのだと思います。でも、結果的に『よくやった。偉い!』と関西市民に支持され、山本氏は局を代表する人気アナになりました」(関西のテレビ関係者)

 芸能人でも「僕は在日韓国人」とカミングアウトした者もいれば、「私はレズ」と告白した女性歌手もいた。最近では浅香光代が「私は政治家の愛人として2人の子どもを産んでいた」と告白した。時期やタイミング次第で、実像を告白すれば、一般人に支持されることもある。逆に告白させようと虎視眈々とマスコミが狙っている芸能人も少なくない。

「僕はカツラでした」とカツラを外すぐらいは可愛いと思うが――。

今すぐ会員登録はこちらから

人気記事ランキング

2024.11.25 UP DATE

無料記事

もっと読む