ツタヤはただのポイントシステム屋さん!? ビッグデータ活用の本当の難しさとは?

――みずから収集した膨大なデータをもとに、前ページで解説したビッグデータ分析システムを実際に運用しているのはどういった企業たちなのか? そこから見えてくるのは、やはりあの世界的IT企業の優秀さと、そして一部のニッポン企業のダメダメっぷり……?

『どう使う? が解決する! ビッグデータ実例でまるわかり!』(TAC出版)

「ビッグデータをビジネスに活用する」。そう高らかにうたっている企業が増えている。だが、その内実は企業によってさまざまだ。ここでは、ビッグデータを実際に収集・運用してビジネスを行っているという企業が実際に何をしているのかお伝えしよう。

 まずは、グーグルやアマゾンなど海外の巨大IT企業だろう。前ページでも述べた通りこの2社は、収集したビッグデータを運用するシステムも自前で賄っている。実はそうした企業の代表例が日本にも存在する。セブン-イレブンやイトーヨーカドーなどを運営するセブン&アイ・ホールディングスだ。

 コンビニ企業が、商品販売にあたって徹底的なデータ分析を行っていることは知られた事実だ。例えば店舗の詳細な売り上げ、商品、天候、季節、交通量、周辺の人口などのデータを利用して、店舗の売り上げシミュレーションや各商品の詳細な販売予測等を日々はじき出している。

 当初は単純なPOSデータ分析であったが、データを蓄積するにつれてセブン-イレブンは、分析結果をメーカーとの共同商品開発に利用したり、あるいはプライベートブランドの開発に活用したりしている。その徹底したデータ利用はコンビニ業界の中でも頭ひとつ抜けており、それがコンビニ業界で長年トップを独走している理由だとも言われている。

 同時にセブン-イレブンは、そうした分析の元になっているデータを絶対に外部に出さないことでも知られている。ある調査会社の社員は「我々は多くの小売業者からデータを受け取り、分析を代行する代わりに、ほかの事業者のデータと総合して、その市場全体の動向も分析しています。でも、コンビニ業界トップのセブン-イレブンのデータが欠落しているため、データとして不完全なものにならざるを得ない。あそこの持っているデータは、それくらい膨大かつ強力なんです」と語る。

 これは、セブン-イレブンが外部の調査会社や分析会社に頼る必要がないということの証左でもある。自分たちで集めたデータを自社システムで運用・分析して、商売の改善やサービス向上に努める。ビジネスとしては極めてまっとうで、利用者からも理解が得られやすいだろう。

 一方、自分たちで集めるだけでなく、さまざまな事業者からのデータも積極的に集めているのが、ツタヤを擁するカルチュア・コンビニエンス・クラブ傘下のTポイントだ。Tポイントは、加盟小売店や飲食店にポイントシステムを提供し、その運用のために販売データを取得。そうして収集したデータをマーケティング分析に活用しているといわれている。

 しかし、ITジャーナリストの西田宗千佳氏は「Tポイント運営におけるツタヤは、本質的には"ポイント屋さん"です。彼らがやっているのは、ポイントやクーポンと引き換えに利用者の属性データを集めるシステムを多くの小売業者に提供しているだけ。収集データ量としては確かに膨大ですが、ビッグデータ処理といえるほど分析の成果が出ているように見受けられません」と、その実態を語る。

 一方で、意外なところでビッグデータ分析が大活躍してる業界がある。そのひとつが、DeNAやGREEなどのソーシャルゲーム業界だ。

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