"ビッグデータ狂騒曲"は羊頭狗肉の(禁)ビジネス!?

 TカードやSuica、そしてグーグルやアマゾンなどが利用しているということで、にわかに注目を集めている「ビッグデータ」。しかし実は、確かに膨大な個人データを集めることだけは可能になっているが、それをデータ解析の手法を利用して多角的に分析し、活用できている企業は非常に少ないという。というわけで、「ビッグデータ」の名の下に繰り広げられるビジネス合戦の実態を追う!

『顧客を売り場に直送する ビッグデータがお金に変わる仕組み』(講談社)

「ビッグデータ」。2013年のビジネス流行語大賞を決めるなら、この言葉が最有力候補だろう。しかし、それが本当に意味するところはあまり知られていないのではないだろうか?

 一般に「ビッグデータを活用する」という場合、「大量のデータを収集して分析し、ビジネスに役立てる」という意味で使われることが多い。企業が収集可能な、顧客データをはじめとする膨大な量のデータを多角的に分析、その結果に基づいて事業の効率化、サービスの改善をもたらし、企業をより成長させていく──こんなイメージではなかろうか。事実、総務省によれば、ビッグデータが普及することで約10兆円規模の経済効果があり、12~15兆円規模の社会的なムダが削減できるとされている。

 では、この「ビッグデータ」とは、実際にはどのくらいの量を意味するのか?『顧客を売り場に直送する ビッグデータがお金に変わる仕組み』(講談社)などの著作があるITジャーナリストの西田宗千佳氏は、その定義を「最低でも1日あたり数億件以上が蓄積され、総体での処理量では兆に達したデータといえば間違っていないでしょう。それ以下のものは、1台のマシンのエクセルでだって処理できる、単なる『データベース』ですね」と語る。

 もともと「ビッグデータ」とは、純粋な科学技術の研究において使用されていた語だ。たとえば温暖化の研究。世界各地で採取された気象データを元に将来を予測するシミュレーションを行うには、日々蓄積される数億から数兆件にも及ぶデータと、それを処理する莫大な計算が必要だ。このような量のデータを処理するためには当初、巨大なスパコンが必要であり、とても普通の企業が日常的に扱えるようなものではなかった。しかし、コンピュータが高性能化し、複数のマシンに分散して計算を行う技術も発達してくると、ビッグデータを安価なパソコンでも処理できるようになってくる。さらにクラウド化によってコンピュータを自前で用意する必要もなくなってきたことにより、ビッグデータ処理が普通の企業でも手が届くものへと変化してきたのだ。

 一方で企業側に関していえば、ビッグデータそのものの収集が容易になってくる。IT化が進んだことで、ビジネスにかかわる情報がすべてデジタル化され、蓄積されるようになったのだ。一説にはそうしたデータの総量は、日本企業だけでもエクサバイト(ギガバイトの10億倍)という途方もない大きさになるという。

 このように、データ処理システムの発達とデータ蓄積の容易化が共に可能になって初めて、ビッグデータをビジネスに活用するという視点が一般企業にも生まれてきたのである。

今すぐ会員登録はこちらから

人気記事ランキング

2024.11.21 UP DATE

無料記事

もっと読む