【ピーター・バラカン】取材力とマニア度がすごい! ディープな海外音楽誌

──上品な語り口で知られるブロードキャスター、ピーター・バラカン。ソウル、ブルース、ロック……多方面の音楽に精通する彼は、どんな雑誌をこれまで読んできたのか? そして今愛読する、一線を超えた音楽誌とは?

(写真/細倉真弓)

ピーター・バラカン
1951年、英ロンドン生まれ。ラジオは『BARAKAN MORNING』(InterFM)、テレビは『CBS60ミニッツ』(TBSニュースバード)などに出演中。著書に『魂(ソウル)のゆくえ』(アルテスパブリッシング)などがある。

【3】「MOJO」
Bauer/93年創刊/4.60ポンド
イギリスの音楽誌。ビートルズやボブ・ディランなどクラシック・ロックを掘り下げる企画が多いものの、ザ・ホワイト・ストライプスに初めてフォーカスした英国の商業誌でもある。

 今、日本の音楽誌では僕が興味を持つようなものはほとんどないので、海外の音楽誌を中心にお話したいと思います。

 ロンドンにいた子どもの頃、イギリスの音楽誌だと「NME」「Melody Maker」「Disc」「Record Mirror」の4誌はタバコ屋で売られていて、名が知られていました。内容は軽いニュースが中心で、僕もそれらを読んでいたけど、1967年に「Rolling Stone」【1】がアメリカで生まれます。たしか、イギリスでは本国の発売より2週間ほど遅れて売られていたのかな。ヒッピー、ベトナム反戦、ロック、LSD……と隆盛していたカウンター・カルチャーの中心地サンフランシスコで創刊されたその雑誌は、政治的な観点から音楽を批評したりしていました。当時はグラビアはなく、従来の音楽誌より圧倒的に文章が面白かった。音楽ジャーナリズムの定型を作った雑誌ですね。

 僕が好きなブラック・ミュージック関係だと、イギリスには60年代から「Blues & Soul」という専門誌がありましたね。ファンジンみたいな「Blues Unlimited」もあったな。これは中高生の頃からよく読んでいました。80年代に登場した「THE WIRE」【2】や「Straight No Chaser」は先鋭的な音楽をしっかり取り上げていて、面白い雑誌だと感じましたね。

 その後、僕も年を取り、イギリスの音楽誌は熱心に追わなくなりましたが、ここ15年ほど定期購読しているのが「MOJO」【3】「fROOTS」【4】。前者には、過去の音源について知らなかった話がよく載っています。例えば、ソウル・シンガーのマーヴィン・ゲイの名盤『What’s Going On』がつくられた裏側について、関係者への緻密な取材を重ねながら、とことん追究する企画があったりする。詳しいつもりのレコードでも、「MOJO」には新たな発見がよくあります。「タイムマシーン」というコーナーも面白い。何年何月に音楽シーンで何が起こったのか、当時ヒットチャートや写真と共に綴られていて、過去の情景が思い浮かびます。

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