──今更いうまでもなく、宗教は特殊法人として保護されており、そのお陰で会計報告が一般よりも相当ゆるい。だが、国の借金が100兆円を越える昨今。「ボロ儲けの宗教法人にも課税すべきだ」という議論もチラホラ聞こえてくる。果たして宗教はどのように稼いでいるのか? そして本当に儲かっているのか? その実態を追った。
11月に落成した創価学会総本部には、ひと目拝もうと、観光客が詰めかけていた。
東京・信濃町に新たなる名所が誕生した。総工費170億円をかけて建設された創価学会の新総本部ビルが、創価学会創立記念日の11月18日に落成したのだ。地上7階建て、1400人が収容できる礼拝堂もある。さらに、新総本部の南東には創価学会文化センター(地上6階 2012年落成)や、そのほど近くにもSGI世界文化センター(地上6階、10年落成)と、創価学会の総本山・信濃町は今、関連施設の建設ラッシュなのだ。関連施設が増加していくばかりで、現地に赴けば、新しく完成した施設をひと目拝もうとしてるのか、恍惚の表情の人々であふれており、いよいよ信濃町は“創価学会の街”化に拍車がかかっている。
だが、さらに近隣の不動産を買いあさっているという情報もある。
「不動産といえば、02年、真如苑が『日産村山工場』の土地(東京・武蔵村山市、立川市)を740億円弱で購入。08年には千代田区一番町のダイヤモンドホテル跡地を約80億円で取得している。幸福の科学も銀座、高田馬場、赤坂などのオフィスビルを次々に購入。お金を不動産に変えるのは資産運用のセオリーですが、さらに宗教法人の場合は用途が『礼拝所』であれば、固定資産税もかからない。さらに、収益事業から宗教法人本来の業務のために支出された金額は、寄付金とみなされて、収益事業の所得の20%の範囲内で損金の額に算入されるからなのです。『みなし寄付金』は本来、寺院の基盤を安定できるように考えられました。軽減税率以上に非課税となるシステムで、これを最大限に利用している新宗教が多くはびこっているのもまた、事実です」(宗教ジャーナリスト)
いうまでもなく現在、日本の財政は最悪レベルで、その負担は国民に重くのしかかっている。そもそも宗教法人は学校法人などと同様に、公益法人等として税制面での優遇がされており、こうした状況を見てみれば、国民から搾り取るのではなく、ボロ儲けの宗教法人にも課税すべきだとして、“宗教法人課税論”が再燃しそうだ。
宗教法人の事業内容を見てみれば「宗教活動(お布施やさい銭など)」「公益事業(学校や幼稚園、博物館の運営など)」「収益事業(出版業など34の業種)」の3つに大別されるが、「宗教活動」「公益事業(学校や博物館の運営など)」であれば法人税、消費税、住民税などが原則非課税になる(ただし、消費税や所得税の源泉徴収義務は発生する)。課税対象となるのは「収益事業(出版業など34の業種)」だが、その税率も19%と優遇されているのだ(一般企業は25.5%前後)。
たとえば、創価学会の「聖教新聞社」、幸福の科学の「幸福の科学出版」などは出版業として収益事業にあたり、神社や寺院などが一般向けに有料駐車場を作るケースや、オフィスビルやアパートを作って賃貸する場合なども収益事業になるのだ。
「宗教法人のビジネスモデルとして典型的なのは、学校経営(公益事業)と出版業(収益事業)でしょう。出版業は、もともとは193 0年には"読めば病が治る"と『生長の家』が機関誌を布教のツールに使ったことがきっかけで、戦後はこのビジネスモデルを創価学会や幸福の科学を始めとした、ビジネスのうまい新宗教が踏襲しています。大川氏の『霊言本』は次々と出版されていますよね。収益事業なら、“教え主”がタクシー会社や自動車学校など『三ツ矢グループ』の社長を務める世界真光文明教団。ゴルフ場やキャンプ場を経営する『光丘』(年商35億円)を傘下に持つPL教団などがあります。09年には長野県など中部地方を中心にラブホテルを経営する宗教法人が、関東信越国税局から約14億円の所得隠し(宿泊料の一部をお布施扱いにしていた)を指摘されていたというニュースもありました」(宗教ジャーナリスト)
非課税の本業(お布施やさい銭)や軽減税率の副業(出版業など34の業種)で得た宗教マネーを不動産に投資して、さらに利益を上げ、金満宗教化する……という、不届きな輩も出てくるのだ。
しかし、おいしいともいっていられない現実があるという。