「チョコレート・ディスコ」「ボーン・ディス・ウェイ」――バレンタイン大統領の暗躍とレディー・ガガの人間性

――第17回文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞を受賞した「ジョジョリオン」。長く愛される「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズに眠る、知られざる音楽的世界を知ればもっとジョジョが面白くなる!

『GAME』(Perfume)

第七部『スティール・ボール・ラン』
出演:ディ・ス・コ
スタンド:チョコレート・ディスコ
引用:「チョコレイト・ディスコ」(Perfume)

 第六部で、"世界が一巡"したことにより、第七部『スティール・ボール・ラン』では時代がさかのぼり、第一部と同じ19世紀へとさかのぼった。言わば第一~六部までの世界のパラレルワールドといった設定もあり、それまでのジョースター一族とは無関係ながらも、主人公はジョニィ・ジョースターとなり、ディエゴ・ブランドーといった好敵手も登場する。もう1人の主人公とも言えるジャイロ・ツェペリも第二部の主人公、ジョセフの相棒として活躍したシーザー・A・ツェペリを連想させ、読者の間では様々な憶測や議論を呼んだ。

 第七部はタイトルにある通り『スティール・ボール・ラン』というアメリカ大陸横断レースが舞台となっている。そこに隠された"遺体"の謎、アメリカ大統領であるバレンタイン(第七部の黒幕)の陰謀やローマ法王庁、レース参加者のそれぞれの思惑が絡み合い、複雑な人間模様を描きながら物語は展開していく。

 ジョニィとジャイロが黒幕である大統領と接触する緊迫のシーンで、大統領が送り込んだ刺客として登場したのが「チョコレート・ディスコ」なるスタンドを操るディ・ス・コだ。スタンドのモデルとなったのは、いまや日本を代表する女性ユニットとなったPerfumeの「チョコレイト・ディスコ」。2月14日にリリースした4枚目のシングル「ファン・サーヴィス [sweet]」に収録されたバレンタイン・ソングである。

 長き歴史を持つジョジョのシリーズにおいて、スタンドネームに邦楽が初採用されたのが「チョコレート・ディスコ」である(同じ第七部で"ウェカピポ"と"マジェント・マジェント"の2人がSOUL’d OUTの楽曲から拝借されているが、スタンド名ではなく人物名。荒木飛呂彦とSOUL’d OUTの親交が深いことは周知の事実)。

 "洋楽引用ルール"が破られたことに加えて、第七部連載当時のPerfumeと言えば、「チョコレイト・ディスコ」でブレイクのきっかけを掴み、チャート上位の常連となっていたという事実があるが、SOUL’d OUTのように親しい間柄でもなかったPerfumeの楽曲から、なぜ引用することを選択したのか。この出来事は、読者にとっても、Perfumeにとっても、ジョジョのスタンドに採用された喜びを雑誌で伝えたプロデューサーである中田ヤスタカにとっても、まさに青天の霹靂であったと言える。

 肝心の「チョコレイト・ディスコ」が引用された背景と物語の因果関係だが、空想に耽る隙さえ与えない意外なものであった。

バレンタインが近づいて
(中略)
対決の日がきた
(Perfume「チョコレイト・ディスコ」の歌詞より抜粋)

 そう、第七部の黒幕である「バレンタイン(大統領)が近づいて」「(ジャイロとジョニィとの)対決の日がきた」のだ。この歌詞こそ第七部のクライマックスを演出しており、偶然でも突然でもなく必然性を帯びて物語に拍車をかける。

 残念なことにチョコレート・ディスコの本体であるディ・ス・コはジャイロとの戦闘でシリーズ・タイに匹敵するほどあっけない登場回数で再起不能となってしまうが、"黄金長方形"のヒントを与える重要な役割を担ったと言える。

 "黄金長方形"――第七部において、この言葉はジャイロとジョニィの成長過程を示す鍵となっているが、じつは“黄金三角形”なる形態も存在する。黄金長方形とほぼ同原理で、永遠に相似の図形を生み続けられ、その頂点を繋ぐことで螺旋(回転)を生み出すことができる。

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