――マンガ好きなら「オススメのマンガは?」と聞かれて困った経験はないだろうか? 内心では好きなマンガの傾向を根掘り葉掘り聞いてソムリエばりに選んだ1冊をお勧めしたいところだが、相手もそんなメンドウは望んでいないだろう。そこで役立つのがその年、面白かったマンガをランキング形式で紹介したガイド本の存在だ――。
画像左上より時計回りに「マンガ大賞」「文化庁メディア芸術祭」「コミックナタリー大賞」「このマンガがすごい!」のHP。
ここ数年、マンガ業界では、マンガ賞やランキング本の増加が話題になっている。個人主催のものから地域限定のものまで合わせれば相当数になる。その背景にあるのは新刊コミックスの点数の多さ。巻数ものもあるとはいえ、2003年以降は毎年1万点以上の新刊が店頭に並ぶ。これを見る限り、作品選びの指標となる賞やガイド本が生まれるのは必然だろう。そこで、マンガ業界の外側からは見えにくい「マンガ賞」や「マンガランキング」の意義と変遷、その未来像について考察してみたい。
もっとも古いマンガ賞は、1955年に自社の創業記念行事の一環として設立された「小学館漫画賞」だ。同じ由来の版元主催の賞としては「講談社漫画賞」がある。昨年発表の第36回講談社漫画賞・少女部門では小学館刊行の『失恋ショコラティエ』【1】が受賞するなどの番狂わせも起きたが、基本的には自社内の刊行物が賞を取ることで共通。“お手盛り感”が世間一般に浸透したこともあってか、2つの賞は作品のセールスに影響を及ぼさないことでも共通している。
歴史あるマンガ賞としては、72年よりスタートした「日本漫画家協会賞」もある。主催は社団法人の日本漫画家協会で、いわば“マンガ家がマンガ家に贈る賞”だ。今年、最終巻108巻(!)が刊行された『静かなるドン』【2】が13年度の大賞作なのは納得として、12年度は『ONE PIECE』が大賞を受賞。怒涛の展開を見せた"マリンフォード頂上戦争"後とはいえ、その時すでに60巻を越えており、今なお連載中のビッグタイトルに「なぜそのタイミングで大賞を?」という疑問もある。