【井口 昇】『進撃』ヒットで追い風が吹く! 残酷描写も受け入れる土壌の醸成

――『進撃の巨人』の特徴のひとつに、巨人が人を食い殺す残酷描写や、あっさりと人が死ぬバイオレンス表現がある。この世界観を、『片腕マシンガール』や『ロボゲイシャ』といったスプラッター映画を撮り続けている映画監督・井口 昇はどう見たか?

(写真/高橋宗正)

『進撃の巨人』のヒットには、感謝してるんですよ。少年誌でここまでの残酷描写をやる、この世界観が受け入れられていることが、何かいい兆しなんじゃないかと思ったんですよね。

 スプラッターやホラー、バイオレンス映画って、昔はデートムービーの扱いだったり、テレビCMもガンガン流したりしてエンターテインメントとして楽しまれていた時代があったんだけど、1988年頃に起こった宮崎勤事件の衝撃でなんとなく自粛ムードに入ってしまったんです。それからずっとキワモノ的な扱いを受けてきた。僕も『片腕マシンガール』(08年)以来、バイオレンス描写やスプラッター描写が多い作品を撮ってきましたけど、最初の頃は女性のお客さんなんて全然いなかった。それが、ここ数年で少しずつ変わってきてるんです。ここ2年くらいの作品だと、劇場に若い女性のお客さんが増えてきた。

 で、考えてみると、『進撃の巨人』を描いてる作者の方もそうだと思いますが、今の若い人たちってゲームで残酷描写を観てきてる世代なんですよね。『バイオハザード』もそうだけど、ゾンビとか不気味な生き物に人間が追い詰められて襲われるというシチュエーションを見慣れてる。『進撃の巨人』を読んで、こんなに露骨にグロいのにアニメ化もされて一種のムーブメントになって爆発的に売れているという事態が、日本の社会の中にもそういうものを受け入れる土壌ができてきてるんだなと実感できました。

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2024.11.24 UP DATE

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