メディア統制と“教祖”HIROの徹底教育――“黒いジャニーズ”EXILEのゴシップはなぜ出ないのか?

HIRO、MATSU、USA、MAKIDAI、ATSUSHI、AKIRA、TAKAHIRO、KENCHI、KEIJI、TETSUYA、NESMITH、SHOKICHI、NAOTO、NAOKIの14人組ダンス&ヴォーカルユニット。黒い。

 いまや巨大産業と化したEXILE擁する「株式会社LDH」(LDHは「LOVE/DREAM HAPPINESS」の頭文字)。リーダー兼社長であるHIROの手腕さながら、DJ活動や俳優業など、EXILEメンバー個々の活躍はもちろん、三代目J Soul BrothersやGENERATIONSといった兄弟ユニット、そしてFlowerやHappinessなどの姉妹ユニットの育成、さらには格闘家や脚本家のマネジメントのほか、アパレルブランドやダンススクールの運営など、その業務は多岐に渡る。

 事実、2010年3月25日付の朝日新聞の報道によると、09年3月期の同社売上高は100億円と突破したという。

 しかし、その巨大産業の中核を担うEXILEの活動においても、AKB48のフロント・メンバー“神7”よろしく、彼らが“王者”に君臨し続けるための地位を支えるメンバーが、確実に存在する。

 本特集では、音楽業界において燦然と輝く、「黒い巨塔 株式会社LDH」を考察するとともに、EXILEが抱える苦悩や熾烈な覇権争いについて迫ってみたい。

 音楽業界の業績不振が続くなか、嵐やAKB48といったアイドルたちに負けず劣らず安定したセールスを叩き出すEXILE。AKBの握手券商法に顕著だが、アイドルは曲の善し悪しに左右されることなく、市場を独占する人気と戦略で売り上げ枚数を稼ぐことが可能だ。しかし、EXILEは本格派志向のアーティストゆえ、戦略に加えて常に“実力”を提示しなければならない。

 一昔前なら音楽に興味を示さないお茶の間の主婦やサラリーマンからしてみれば、EXILEは踊って黒光りする壮年層集団に映ったかもしれないが、いまや彼らは、天皇皇后両陛下の御前で天皇即位20年の奉祝曲を披露するという、まさに国民的アーティストにまで成り上がった。その背景には、所属事務所LDHの社長とEXILEのリーダーを兼任するHIROの"教祖"とも呼べるほどの徹底的な教育と経営方針が大きく関与している。

「その容貌や活動からか、EXILEは一見ただの“経営者HIROと愉快な仲間たち”に見えるかもしれませんが、強固なまでに組織化された集団です。会社経営は言うまでもなく、社長HIROを筆頭に、メンバーそれぞれが多忙を極めながらも社内会議は頻繁に出席し、スタッフを交えたマーケティング・リサーチも怠らない。また、社長だけに限らず、各メンバーが企業や取引相手との接待に出向いている話を聞くたび、正直、国民的トップ・グループがそこまでしなくてもいいのに……と思ったりもしますが、HIROさんが率先して出向いていることもあって、他メンバーも手を抜くことはできない。LDHは絶対的教祖HIROを崇める一種の宗教と言っても過言ではないと思います」(音楽関係者)

ゴシップも美談にすり替える!? LDHの巧みなメディアコントロール

 一昨年、メンバーのSHOKICHIが一般人女性をラブホテルに連れ込んだことが「女性自身」(光文社)にすっぱ抜かれた際、LDH所属メンバーには"夜遊び禁止令"が敷かれたという(テレビやラジオ、雑誌に至るまで、メディアに登場するメンバーには“夜遊び”という言葉を連想させる発言にまで箝口令が敷かれた)。その後もメンバーのスキャンダルはたびたび世間の注目を集めてきたが、HIROと上戸彩の結婚に象徴されるように、至って“クリーン”なイメージが強く、SHOKICHIの事件以降、メンバーが不祥事を起こさないのは、社長HIROの徹底的な教育による賜物とも言われ、それがメンバーの自己責任能力の高さ、危機回避能力の高さにつながっている。

 ちなみに、13年1月、「週刊文春」(文藝春秋)誌上にて、弟分グループGENERATIONSの白濱亜嵐がAKB48の峯岸みなみとのスキャンダルが報じられた時には、峯岸の坊主頭が話題となったが、一方の白濱は表向きはお咎めなし。しかしその裏ではしっかりと、「実力より先にスキャンダルを出している場合じゃない」というお灸を据えられたようだ。

「LDHは出版社としての事業も展開しており、『月刊EXILE』を発行していますが、この雑誌のみでEXILEをはじめ、所属アーティストのプライベートに迫る記事を展開し、販売促進を図っています。つまり、“EXILEの面白いインタビュー”というのは、他メディアでは登場することがまずない。同誌において、インタビュー記事に外部のライターを起用することもほとんどなく、『月刊EXILE』の編集者/ライターがほぼすべての制作を担当しているので、いわゆる“ここだけの話”というのが外部に漏れることも皆無。これも編集長を務めるHIROさんのメディア・コントロールの一環ではないでしょうか」(同)
 
 クリーンなイメージを保ち、プライベートに関することもメディア・コントロール下に置く――。そのこの結果、AKIRAと長澤まさみ、TAKAHIROと板野友美の熱愛が週刊誌を賑わせたことがあっても、EXILEの女性ファンががっくりとうなだれそうな生々しい話はあまり出てこない。一方で、そういったスキャンダルのさなかに、「MATSUがベーチェット病に理解を示した一般人女性と婚約」といった報道が流れることによって、熱愛ゴシップも「美談>スキャンダル」の図式が成立する。

HIROが目指すのはジャニーさん!? ジャニーズ化するLDHの未来

 こうした組織力を誇るEXILEとLDHだが、彼らが手掛ける事業は芸能・出版だけではない。LDHが経営するダンススクール「EXPG(EXILE PROFESSIONAL GYM)」は全国に店舗を広げ、ダンス&ボーカルスクールとしてはトップクラスの知名度を誇り、現在は入会が困難になっているほどだ。(詳しくは『教育ローンも準備! ダンススクールビジネスから見る巨大”エイベックス帝国”の野望』を参照)

「EXPGは儲かっていますが、本当にダンスが好きでスクールに通う生徒がほとんで、"EXILE"というキーワードはあくまできっかけのひとつにしか過ぎない。スクール生になっている以上、"EXILEが好き"というイメージは持たれるかもしれませんが、生徒はそこまでEXILEを神格化している印象は見受けられません。でも、現EXILEのメンバーのほとんどはHIROさんを崇拝していることは間違いない。EXILEのメンバーに不祥事が少なく、むしろ下の世代からスキャンダルが生まれるのは、そういう関係値だからじゃないでしょうか。あくまで推測ですが、HIROさんはジャニー喜多川になりたいのかな? と思うときもありますね」(同)

 これまでに「LDHはジャニーズの経営方針と似通う部分がある」と幾度となく指摘されてきたが、確かにあらゆるスタイルの男性グループを世に送り出す、という点では非常に酷似している。さらに俳優業や舞台への進出など、類似する項目は年々増えている印象だ。

 しかし、HIROがジャニーズとの比較をかたくなに嫌悪するのは、「我々は徹底教育が施されたプロフェッショナル集団である」という自尊心の表れだろう。EXILEに忠誠を誓うためにダンススクールに通っているわけではない生徒同様、ジャニーズJr.の未成年飲酒問題や女性スキャンダルが頻発するのは、無論未成年という精神的な未熟さもあるが、ジャニー喜多川社長への敬意が薄いから、とも言えるのではなかろうか。そういった、ジャニーズの現状を見てか、LDHの社長であるHIROは、三代目J Soul BrothersやGENERATIONSなどの若年層若手グループの育成にも余年がないのだ。

 こうしてジャニーズと名を連ねるほどにまで、一大企業に成長したLDH、そしてEXILEだが、前述した通りHIROの徹底したメディアコントロールが奏功したか、あらゆる意味で、彼らをより深く考察するような論は、なかなか見受けられない。

 そこで今回、「サイゾーpremium」では、“パフォーマーとしてのHIRO引退”というトピックも併せ、彼らの音楽的実力、株式会社LDHをとりまくスタッフの本音裏話、はたまたAKB48の神7よろしくEXILEサムライ5の選出など、多角的EXILE論を展開してみたい。

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