必勝スタイルは"パクリ&インスパイア"系!? 『重版出来!』には載らない編集者座談会

――出版社の売り上げが下がり続けている中で、少し売れた作品がゴリ押しされたり、売れているというだけであらぬ批判にさらされることもしばしば。本誌マンガ特集恒例の編集者匿名座談会では、そうした状況の中で業界にかかわる方に集まってもらい、2013年のマンガ業界に生まれた良作・駄作から事件、ビジネス展開まで本音を聞いた。

【座談会参加者】
A… 30代・大手出版社編集
B… 20代・中堅出版社編集
C… 20代・中堅出版社女性誌編集

A 今年のマンガ業界と作品に関する話を……ということだけど、今年も、『進撃の巨人』(講談社)の年だったね。

B ただ、注目が『巨人』に一極集中したから、「2013年はこれ!」という、今年を象徴するマンガはないですよね。どれも頭ひとつ抜けているという印象は少ない。

A そんな講談社でポスト巨人の最右翼といわれているのが「Good! アフタヌーン」で連載中の『亜人』(共に講談社)。『進撃の巨人』に比べると、設定がやや地味だけど、売れ方が似ているよね。講談社もプッシュしているようだし、書店員にも熱が伝播している感じ。このまま順調にいけば、『寄生獣』(同)のような名作に育っていくんじゃないかと期待しているよ。

B 『亜人』は評判がいいですよね。一方、「ハルタ」(KADOKAWA)で連載している『坂本ですが?』【1】はどうですか? 編集者が選出する「コミックナタリー大賞」では、『亜人』を抑えて大賞を獲得しているんだけど。

C 2話まではすっごく面白かった。でも、あんなに書店の棚に並べられて、そこまでもてはやされるほどのものかな? って。

B 出落ち感があるということ?

A 『デトロイト・メタル・シティ』(白泉社)や『テルマエ・ロマエ』(KADOKAWA)に続く、「出落ちなのにヒットして長々と続けた」の系譜だろう。ただ、『坂本ですが?』がすごいところは「単行本の表紙が面白そうに見える」ところ(笑)。

C 過大評価というなら、「月刊コミックゼノン」で連載中の『ワカコ酒』(共に徳間書店)もどうでしょうね。アラサーOLがひたすら毎回一品のつまみを肴に酒を堪能する……という内容が、同世代の女性書店員には刺さるのかもしれないけど。

A 「ゼノン」は、販促会社を使い、いろいろなグッズを付けて書店にプッシュしているんだよ。書店としても、販促グッズがうれしいので棚をつくるから、売れているような雰囲気が演出できて、また売れる。

B 書店が喜ぶといえば『重版出来!』(小学館)。各社でマンガ業界の内実モノは出しているけど、出版社によって文化が微妙に違うから、業界関係者的にはそこに注目する読み方が面白いです。

A 内実モノは小学館なら『重版出来!』、講談社なら『働きマン』、集英社なら『バクマン。』などがあるからね。ところで、今注目の若い世代のマンガ家は誰だろう?

C 宮崎夏次系の『僕は問題ありません』(講談社)や九井諒子の『ひきだしにテラリウム』【2】なんかはメディア芸術祭あたりでウケが良さそうです。あとは田中相の『千年万年りんごの子』【3】も、かなり面白くて好き!

B 『ハイスコアガール』(スクウェア・エニックス)は出落ち系だと思って読んでいたら、全然出落ちじゃなかった。隣町のゲーセンに行くとか、秘密基地でゲームボーイをするとか、ぼくら世代はノスタルジーを感じます。それに、絵が不思議。押切蓮介は、全然絵がうまくないのに女の子が超かわいく見える。ああいうマンガを読むと、絵って理屈じゃないんだなと思いますね。

A ノスタルジーという意味では、「週刊少年マガジン」で連載している『七つの大罪』(共に講談社)は『ドラゴンボール』(集英社)そっくりだし、「週刊少年ジャンプ」の『食戟のソーマ』【4】(同)は、プロットが『ミスター味っ子』(講談社)だよね。

B Yahoo!知恵袋には「『七つの大罪』って『ドラゴンボール』のパクリですよね?」という質問があるくらいです(苦笑)。『ワンピース』(集英社)を読んでいる中学生も『ドラゴンボール』を知らないで読んでいる子も多いだろうし、時代は繰り返すということじゃないですかね。

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