マンガ業界、次の”利権”は「食マン」 「リバイバル」そして「引き抜き」か!?

――売り上げ低迷厳しい出版界の中で、なんとか活路を見いだそうとしているコミック業界。講談社の『進撃の巨人』、小学館の『銀の匙』、そして相変わらず売れ続けている集英社の『ONE PIECE』など、各社マンガ事業では好調なドル箱作品があるが、それは崩れゆく巨大な総合出版社を救うほど巨額の利権となっているのだろうか?

(写真/石黒淳二 go relax E more 取材協力/池袋ガールズバーYAYAYA 豊島区池袋2-4-3徳永第5ビルB1F)
単行本とマンガ誌の推定販売金額推移。
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 2013年のマンガ市場は、テレビアニメ化して部数を一気に伸ばした『進撃の巨人』(講談社)が大ヒットし、推定販売金額は前年同期比約2%の増(出版月報7月)。同誌によると、『進撃~』はアニメ放送からわずか2カ月で870万部を増刷する破竹の勢いでマンガ市場を牽引した。一方、月刊・週刊コミック誌の推定発行部数は7.6%も減少。1959年に創刊した老舗誌「漫画サンデー」(実業之日本社)が休刊したというニュースは、業界に大きな衝撃をもたらした。特に月刊誌は10.2%減と落ち込みが深刻だ。

 トレンド情報誌「出版月報」2月のデータでは、12年におけるマンガ誌の推定販売部数は4億8303万冊で、97年の12億1617万冊と比較すると半減以下。売り上げは05年から単行本に抜かれ、12年は1564億円となっている。コミック単行本の2202億円と比べると、いかに規模が縮小しているかがわかる。しかし、「締め切り通りに作品を提出させるために、マンガ誌を存続させる版元も多い」のだとか。

 さらに、マンガ誌ほどではないが、単行本の市場も緩やかな減少傾向にあるから深刻だ。もちろん、各社とも手をこまねいてるわけではなく、『ときめきトゥナイト 真壁俊の事情』(集英社)や『北斗の拳 イチゴ味』(徳間書店)などかつての名作を蘇らせたリバイバル系作品や、『花のズボラ飯』(秋田書店)などで掘り起こした“食系マンガ”を投入して、低迷する売り上げにテコ入れを行っている。

 しかし、「『暗殺教室』『黒子のバスケ』など、新たなヒット作を出し新陳代謝に成功した『週刊少年ジャンプ』(集英社)は元気だが、ほかの少年誌は、世代交代が不十分」(業界関係者)との声も。集英社の『ONE PIECE』などに匹敵する巨大なドル箱作品を、今後もどれだけコンスタントに生み出していけるかが課題となろう。

 また、状況を打開しようとする象徴的な取り組みとして、ウェブ展開が挙げられる。これらは、紙幅の限られた雑誌では拾い切れない新たな才能を醸成する場として期待されるほか、「定期的にマンガ誌を買う習慣が、消費者になくなった」という根本的な課題にもメスを入れている。

 マンガ業界の行く末は、明か暗か。本特集では、ITを含めた各社の戦略や、アシスタントがマンガ家の性癖をぶっちゃける座談会、“売るための”マンガ賞の実情、そして過激さを増すBLや、極北のエロ劇画マンガの作品深堀などで、2013年とこれからのコミック市場の展望を探っていこう。

(文/宮崎智之)

※本特集で紹介するコミックスは、「『書名』著者名/出版社(発売年)/税込み価格」で表記しております。ただし、掲載するものの中には、絶版などの理由により入手困難なものもございます。予めご了承下さい。

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