“日ドラ”リメイク作品の量産は苦肉の策“一攫千金”狙い!韓ドラ業界の懐事情

――視聴率40%を記録した大ヒットドラマ『家政婦のミタ』。その韓国版リメイクが今、話題だ。昨今、韓国ではこうした”日ドラ”リメイクブームが定着しつつあるが、一方でその質の低下も叫ばれている──背景にある、苦しい”制作会社”の懐事情とは一体?

雰囲気からそっくりな松嶋菜々子とチェ・ジウ。

「契約社員のわたしには、肝臓を酷使する自殺テロみたいな会食に参加する理由がありません」

 これは、2013年4月から韓国のKBSで放送されたドラマ『職場の神』での一幕だ。会社の飲み会に参加しないと言い切る契約社員に、憤慨した上司が「社会人としてどうかね」と詰め寄るが、「業務ではないので」と一蹴されてしまう。

 韓国社会では“飲みニケーション”が盛んで、職場の上司や同僚と週数回、明け方3~4時まで飲むのはざらだ。一部の大手企業でも、酒を飲み歩く体力が出世に直結するとまで言われており、「一緒に食事なんてしたくない」と面と向かって上司に言うなど、社会的にタブーに近い。

 しかし、リアルな社会でも“自殺テロ”みたいな会社付き合いに嫌気が差している視聴者が多かったのか、同作で描かれる“反抗的な非正規社員像”は意外にも好評を集めた。

 それにしても、妙に聞き覚えのあるセリフ。それもそのはず、『職場の神』は、篠原涼子主演のドラマ『ハケンの品格』(日テレ/07年)のリメイク作品なのだ。

 ここ数カ月、韓国では『職場の神』をはじめ、MBCの『女王の教室』、SBSの『その冬、風が吹く』(邦作『愛なんていらねえよ、夏』)など、日本ドラマのリメイク作品が相次いで発表されている。

 これまでも『星の金貨』(韓作『春の日』、05年【※以下、韓国での放送年】)、『白い巨塔』(07年)、『花より男子』(09年)、『イタズラなKiss』(10年)、『JIN-仁-』(韓作『Dr.JIN』)など多くの作品がリメイクされたが、韓国の地上波放送を独占する3大放送局(KBS、MBC、SBS)が同時期にこぞって放送に乗り出すのは、異例のことだ。さらに9月からは、日本で大ブームになった『家政婦のミタ』(韓作『怪しい家政婦』)も、リメイク作品として放送されている。主演は、日本でもお馴染みの大物女優、チェ・ジウ。韓国は、今まさに“日ドラ”リメイクブームを迎えているのだ。

 当然、制作側の意図をくみ取れば、長く続く日本の韓流ブームを利用したビジネス展開を視野に入れていることは想像に難くない。しかし、緊迫する日韓情勢の影響もあってか、「ここ数年、“韓ドラ”の日本人気にもかげりが見え始めている」(韓流雑誌関係者)とも言われており、そうした状況下での“リメイクラッシュ”は、必ずしも有益なビジネスとは言い切れないように思える。

 そもそも、日本ドラマの版権の相場は「これまでは、1話当たり2000~3000万ウォン(約181~272万円)前後。最近では少し高くなって、1話当たりが3000~4000万ウォン(約272~363万円)」(韓国テレビ局関係者)程度だという。人気作になれば、1話当たりの制作費が3000万円程度と言われるが、版権に約10%程度の資本を割くとなれば、決して安い買い物ではないだろう。となれば、韓国の制作会社が日ドラリメイクに力を注ぐメリットはどこにあるのか。

「『冬ソナ』のヒット以降、韓国のドラマコンテンツ事業は、海外展開することで収益が見込まれるビジネスモデルになっています。韓ドラが中国や台湾、東南アジアにも輸出されているのは、周知の事実でしょう。なかでも日本はダントツのトップクライアント。韓国地上波放送の番組輸出総額から見ると、2位の台湾に対し、日本への輸出総額は4倍以上差をつけた9473万ドル(約94億円)にも上ります。そのため、“日ドラ”の版権を買ってリメイク作品を作る人たちは、最初から再輸出することを狙っているはず。日韓関係もよくないし、日本での韓国ドラマに対する評判が落ちていることも事実です。それでも日本で売れるようにするためには、日本で人気だった作品をリメイクしたほうが、嫌悪感を少なくできると考えているのではないでしょうか」(韓国のドラマ制作関係者A氏)

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