――カウンタカルチャーの象徴として位置づけられるポップミュージックだが、その体制側である政治の広報活動に使われている例は多い。第2次世界大戦の頃にはプロパガンダとしても使われていた、政治と音楽の関係について歴史を紐解きつつ、現代ではどんな曲が、いかに利用されているのだろうか――?
“大人気”きゃりーぱみゅぱみゅは、国際親善大使!?
「フランスにファッションモンスター現る!」
今年2月、こんなニュースが日本のネット上を賑わせた。主役はご存じ、きゃりーぱみゅぱみゅ。彼女が、フランスを皮切りに世界8カ国を回り 大成功 を収めたと報じられたことは、音楽好きならずとも知るところだろう。
このライブが行われた翌6月、タイミングを見計らったかのように、フランスのフランソワ・オランド大統領が17年ぶりに国賓訪日。その席で文化振興のための「共同声明」にこぎ着けた安倍晋三首相は、声高に「クールジャパン立国」を宣言。予算規模は2012年度補正予算を含めると、総額840億円になる見通しだ。
ある政治ジャーナリストが話す。
「安倍政権下、クールジャパンは経済の成長戦略の起爆剤。すでに、500億円規模の官民ファンド『クールジャパン推進機構』の発足も決定済み。日本のポップカルチャーが人気を博しているフランスの大統領の訪日も、クールジャパン宣言のお膳立てとして、かなり前から決まっていたようです。きゃりーぱみゅぱみゅは、12年にジャパン・エキスポにおいて同国で根強い人気を獲得し、今回のフランス公演も日本のメディアが大々的に取り上げるなど、日仏の親善大使的な役割を担っていた。ニュースだけを聞くと「大成功」のようですが来場者数は2日間で1000人を上回る程度。日本人の姿も散見できました。ここから透けて見えるのは、クールジャパンとは、政府の政治活動に国民の目を向けさせるゼロ年代的なプロパガンダという見方もできます。フランスとの友好関係を示すことで、政府は、同政策に予算を投じることを国民に承認させたかったのです」
なんとクールジャパンとは、文化的に成熟し、昔に比べて格段にメディア・リテラシーが高くなった日本人に対する巧妙化した“プロパガンダ”の一例という見方があるようだ。ここからは、近代~現代において、政治的意図のある「宣伝活動」がどのように行われてきたのか、近現代の政治が音楽を利用する事例を見ていこう。