iTunes総合1位を獲る猛者も登場! 大手メジャーも青田買いを狙う?”ネットレーベル”が生む新しい音楽

──ネット発アーティストの活躍が、ここ数年音楽業界においてホットトピックになっている。ことここに至るまで、日本のインターネットで音楽系ウェブサイト/サービスはどういった変遷を遂げてきたのか? その歴史を追い、今面白いネットの音楽サービスとアーティストを紹介する。

ネットレーベルが主催するイベントは、客層も若く、場所もいわゆるクラブのハコだけではない手弁当感あたりが、より盛り上がりを誘う部分もあるのかも。

 ネットレーベルという言葉をご存じだろうか? これは一言でいうと、“ネット上で音楽などの作品を無料でリリースする、個人や組織単位のクリエイターレーベル”を指す。

 その規模や更新頻度、ジャンル、リリース形態などは多種多様だが、「ネットレーベル」と自称し活動を展開する彼らは、衰退の陰りを見せる既存の商業音楽を横目に、いつしかひとつの音楽シーンを醸成するまでに至っている。

 ネットレーベルは、いわゆるレコード会社によるレーベルとは異なり、基本的には非営利目的で運営されている。その定義は明確ではないが、複数のクリエイターによるフリーダウンロード音源などをリリースする、ネット上のゆるやかな連帯(=レーベル)だ。楽曲のほとんどが、レーベル名で運営されているウェブサイトからダウンロードが可能。参加する多くがアマチュアながら、売れ線を気にすることなく好き勝手に、言い方を変えればこだわりをひたすら追求して自由に作られた作品群は、音楽通をも唸らせている。しかも、そのすべてが無料で、日々インターネットの海に放流されているとくれば、新しいものを追いかける熱心な音楽好きにはたまらないだろう。

 DTM(デスクトップミュージック)などの打ち込み音楽と相性が良く、レーベルごとに熱心なファンがついたこの分野は、特に2010年以降、オルタナティブな音楽コミュニティを形成。そしてそれは今やネットを飛び出し、リアルに波及している。リリースすれば再生数・ダウンロード数が伸びるのはもちろんのこと、イベントを行えば満員どころか入場規制、グッズも即完……音楽業界関係者なら知らない人はいないといってもいい状態にある。

 例えば、12年に新宿の風林会館で開催された古参レーベル・Maltine Recordsによるイベント「歌舞伎町マルチネフューチャーパーク(カブチネ)」は、開催前からネット上で煽りに煽ってちょっとしたお祭り騒ぎが展開。当日詰めかけた来場者の多さから、会場の底が抜ける恐れがあるとして開始数時間で入場規制となった。

 さらに目立った個人の事例としては、tofubeatsというクリエイターが挙げられるだろう。

 彼は、12年夏に個人制作でデジタル販売した「水星 feat.オノマトペ大臣」でiTunes Store総合1位を獲得し、一気に音楽好きの間で話題をさらった。今年4月にはメジャー第一弾アルバム『lost decade』を発売し、こちらもiTunes Store総合ランキングで1位を記録。さらにワーナーミュージック・ジャパンからリリースされた同CDパッケージ版も、オリコンのCDアルバムデイリーランキングで19位を獲得するという快挙を成し遂げている。

 1990年生まれのtofubeatsは、神戸で育ち、中学生の頃から一貫してネットを中心とした音楽活動を展開してきた。ネットレーベルからの作品の無料配信やDJイベントへの出演、それらを通して他アーティストのリミックスや楽曲提供の仕事にも手を広げ、DJ・リミキサー・トラックメイカーとしてキャリアを重ねている。

 彼の成功により、これまでネットレーベルの存在を知らなかった人たちの間にも、こうした盛り上がりが伝わりつつある。このようにネットレーベルが隆盛するに至るまで、日本のインターネットにおいて自主制作の音楽がどのように発展してきたのか、各種ウェブサービス/コミュニティを振り返りながらたどっていこう。

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