日本IBMで横行中"恐怖の"クビ切り! 雇用規制緩和先取り!?

日本IBMで容易な解雇先取り?

アベノミクス・成長戦略の一環として議論が進む解雇規制の緩和。「問題社員を辞めさせやすくなる」と言わんばかりに、経済界はこぞって歓迎ムードだが、そんな「クビ切り自由化」を先取りするかのような事態が、日本IBMで横行している。今回は、数年後の私たちの 働き方の現実になるかもしれない同社のクビ切りの実態に迫る。

『社員を適正に辞めさせる法』(アニモ出版)

 自民党・安倍晋三内閣は、雇用改革として「成熟産業から成長産業への失業なき労働移動」というスローガンを掲げている。そして、成熟産業から成長産業への労働移動が進まないのは、企業に対する解雇規制【1】が厳しいためだとして、その規制を緩和する政策が、政府の諮問機関である産業競争力会議を中心に議論されてきた。

 解雇規制とは、労働者の解雇(会社による雇用契約の解除)を規制するもので、労働契約法によって、合理的理由と社会的相当性がない解雇は無効になると定められている。要は「これでは解雇されて仕方がない」と認められる理由がなければ、解雇してはいけないというのだ。このルールを守っていては解雇が難しいということで、「金銭によって解雇を可能にする仕組みのルール化」などが、安倍内閣の産業競争力会議で議論されている。

 解雇規制の緩和については、識者の間でも賛否両論が分かれているが、実際に解雇規制が緩まると、どうなるのか? 会社のお荷物になっているダメ社員をさっさと追い出せればせいせいするし、生産性が上がる……。そんな衝動に駆られる経営者が少なくないからなのか、経済界には規制緩和を支持する声が多い中、緩和反対派の懸念がまさに現実のものとなりかねない事態が、ある企業で起こっている。

 その企業とは、日本IBM。同社の雇用問題については、すでに数多く報じられているが、今回改めてその実情を見てみよう。

 日本IBMは今、会社が辞めさせたい社員をすぐに会社から叩き出す「ロックアウト解雇」に揺れている。同社の終業時間(定時)は、午後5時36分。同社社員らによると、ロックアウト解雇の通告は決まって午後5時頃の呼び出しから始まる。6月12日付で解雇された女性社員Aさん(45)の場合もそうだった。

 Aさんは5月31日午後5時、担当業務の進捗報告のために会議室に呼び出され、直属の上司に報告していると、別の上司とHRパートナー(人事部)が突然入ってきて、唐突に「解雇予告通知」を読み始めた。

『日本IBM』
世界170カ国に40万人もの社員を擁し、ハードウェアからソフトウェア、サービスまで幅広く手がける巨大IT企業の日本法人。国内大手ITベンダーの富士通、NECなどと肩を並べる。

「貴殿は、業績が低い状態が続いており、その間、会社は職掌や担当範囲の変更を試みたにもかかわらず業績の改善がなされず、会社はもはやこの状態を放っておくことができないと判断しました」

 彼女は、ほかの社員との会話を禁じられ、定時までに急いで荷物をまとめ、長年働いた職場を去らなければならなかった。仕事の引き継ぎどころか、苦楽を共にしてきた同僚たちへの挨拶さえできずに。

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