星の数ほどあるファッション誌だが、アパレル業界関係者が参考にしているのは一体どの雑誌なのか? いざ話を聞くと、ファッション誌のトホホな現状が明らかになってきた――。
[座談会参加者]
A:大手セレクトショップ男性スタッフ
B:海外ブランドショップ男性デザイナー
C:女性向けブランドショップ女性スタッフ
D:大手セレクトショップ女性スタッフ
A 今回は、「サイゾー」でファッション系の使えるメディア、使えないメディアを選ぶってことだけど、ファッション誌に関しては、最近全然買わなくなった。それこそ若い頃は「Hot-Dog PRESS」(講談社/2004年休刊)とかを読んでいたけど。
B 全体的に、今のファッション誌は、懇意にしているブランドの新作をずらずら並べているだけの商品カタログになってるからね。今はストリート系とかモード系っていう雑誌のスタイルが見えないものが多すぎる。
C そうそう! 私が今働いているのは、渋谷的なギャル系と個性の強い原宿系の中間みたいなブランドなので、5年ぐらい前まではサーフ系の雑誌「Fine」(日之出出版)を読んでました。それで久しぶりに読んでみたら、すごくつまらなくなっててびっくり(笑)。昔は「Tシャツ特集」でも、ビーチのロケでイメージカットを撮影して、紹介している服に合う雰囲気を演出していたけど、今は白い背景に商品を羅列してるだけのページが多くて、ヒドイ。
A 撮影のために商品を無料でリースすることもあるけど、雑誌の編集者やスタイリストも時間がないからなのか、良いものを選ぼうとなんてしてないからね。「時間もないので、とりあえず端から端まで貸してください」とか言われたこともあったよ。
D しかも、どういう企画のページに載るかを教えてくれなかったりするから、出来上がった雑誌を見たら掲載されたカットがすごく小さかったり、ひどい時にはどこに載ってるのかすらわからない(苦笑)。
C プレスの人に聞いた話だと、力関係でいうと、よっぽどのハイブランドじゃない限り、メーカーより雑誌のほうが強い。うちの商品を掲載してもらおうと、編集部に売り込みに行ったら、門前払いされたこともあるとか。青文字系では、「JILLE」(双葉社)とか「mini」(宝島社)あたりは力が強いらしい。
D 女性誌はまだ影響力があるんだ? 個人的には、「MORE」(集英社)とか「Zipper」(祥伝社)は、カタログっぽくて、わざわざ買わなくてもいいかなと(笑)。
B タイアップ記事が多いと、買いたくなくなります。雑誌のタイアップって、明らかにほかのページと構成が違っていて、誌面を見ればすぐわかっちゃう。先日、雑誌の広告営業が来たんだけど、1ページ当たりの掲載料は50万円って言われました。どれだけ効果があるかわからない広告に、そんなに出せないよ。
D 50万円なら雑誌広告としては、安いほうじゃないかな。雑誌にもよるんでしょうけど、大体相場は1ページ100万円って聞いたことがあります。
A 反対に、最近面白いのは「POPEYE」(マガジンハウス)。1年ほど前に誌面を大きくリニューアルして、以前から標榜していた「シティボーイ」というコンセプトを強調して打ち出すようになった。それと同時に、スタイリストに長谷川昭雄さんを起用して、デザイナーからの評価も高いよ。
一昔前のテレビ・ディレクター風!?
『POPEYE』
(絵/都築潤)1976年にマガジンハウスから創刊され、80年代のユースカルチャーに多大な影響を与えたライフスタイルファッション誌。現在の発行部数は5万部弱。12年5月号でリニューアルを行い、アパレル関係者からは好評。襟付きシャツとオシャレネクタイ、半ズボンは、シティボーイ的にはマストアイテム。一昔前のテレビ・ディレクターよろしく、上着は肩か腰に巻くもの。一部モデルが着用している大江健三郎風の黒縁眼鏡からも、その知性がにじみ出ている。
C 私は、ストリートスナップを大々的に掲載してる「FRUiTS」、「TUNE」(共にストリート編集室)が、着こなし方の参考になるし、モデルは基本的に読者なので、「この服、私も欲しいな」と思わせるような作り方をしていると思う。
B 僕の場合、ファッション情報はネットで仕入れるようになりました。ハイストリートをテーマにしたウェブマガジン「Houyhnhnm(フィナム)」のブログや、海外のファッションウェブマガジン「HYPEBEAST」「HIGHSNOBIETY」は情報が早いからよく見てる。「ELLE girl」(ハースト婦人画報社)や「NYLON JAPAN」(トランスメディア)は、「ELLE girl CURATOR」とかって雑誌名を冠したブロガーを集めているけど、日本のファッション系ブロガーの中には、ここらへんからネタを拾ってきてる人も多いはず。日本の雑誌は、今のトレンドを確認するために見るっていう読み方が多くなったかな。
D 海外の影響は強く感じますね。最近だと、海外セレブのスナップを集めた雑誌「WOMAN Celebrity Snap」(日之出出版)が売れているとか。