ひとりの黒人野球選手はただ差別に耐え続けた

雲に隠れた岩山のように、正面からでは見えてこない。でも映画のスクリーンを通してズイズイッと見えてくる、超大国の真の姿をお届け。

『42』

黒人差別が横行していた1940年代に、メジャーリーガーとして活躍した黒人選手とその球団会長の実話を基にしている。本作は、オープニング興収で2730万ドルを叩きだし、今年の4月15日に全米でナンバーワンヒットになった。同興収は野球映画史上の最高記録。

監督・脚本/ブライアン・ヘルゲランド 出演/チャドウィック・ボーズマン、ハリソン・フォード、ニコール・ベハーリーほか 日本での公開は未定。


 4月15日、メジャー・リーグの各球場で、選手たちがみんな背番号42のユニフォームを着た。1947年のこの日、メジャー・リーグで初めてアフリカ系の選手ジャッキー・ロビンソンが公式試合に出た。その50年後の97年、4月15日がジャッキー・ロビンソンの日に定められ、この日だけ選手はみんなジャッキーの背番号42をつけるようになった。永久欠番になった42を。

『42』は、ジャッキーがメジャーに出場した47年の戦いを描いている。

「チームに、誰か黒人を入れるんだ」

 ブルックリン・ドジャーズのGM(ジェネラル・マネージャー)ブランチ・リッキーがそう言った時、関係者は反対した。黒人選手はひとりの前例があるだけで当時、メジャー・リーグは100%白人。黒人は入れないという暗黙のルールがあった。

 特にアメリカ南部では、南北戦争で奴隷制が撤廃された後も人種隔離法が施行され、白人と黒人は、学校もレストランも、バスの座席も隔離されていた。人種隔離への反対運動が始まったのは8年後の55年、撤廃されたのはそれから9年後の64年だ。

「金のためだよ」ブランチ・リッキーは強かに笑う。「黒人を観客として取り込みたい。また、強い選手が活躍すれば、優勝してまた儲かる」

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