『虫の味』(八坂書房)
ここまで、ちょっと嫌~な珍食材の流通ルートを紹介してきたが、そもそも、「食の安全」が叫ばれる昨今、そうした食材に対しての取り締まりは強化されていないのだろうか? MYパートナーズ法律事務所の吉成安友弁護士に聞いた。
──早速ですが、まずはお店が客に提供してよい食品とダメな食品のボーダーラインがどこにあるのか、教えてください。
吉成 食品とは、食品衛生法上、すべての飲食物を指します。その基準は、食習慣において“飲食物である”という認識があるものだということ。しかし、この認識は曖昧で、人が何を食べるかは、時代や文化によって異なります。特に価値観が多様化している現代では、これまであまり食べられなかった“マイナーな食材”だからといって、直ちに問題があるとは言えないと思います。
──とはいえ、これまで食べられてこなかったマイナーな食材には、危険な面もあるとは思うんですが……。そもそも、食品衛生法には、第7条で“新開発食品を禁止することができる”と規定されています。歴史的に食経験がないものは、提供してはダメということではないのでしょうか?
吉成 この規定はあくまで、禁止することが“できる”というものなんですよ。なので、従来食品として販売されていないものだからといって、それだけで“販売してはいけない”という規定ではありません。さらにいうと、この”新開発食品”については、主として、“石油由来などの、化学合成された食品”を念頭に置いて考えられたという経緯がある。もちろん自然からとれる食材も対象にはなりますが、じゃあ、ゴキブリやサソリなどが販売を禁止されたかというと、そういった話は聞きません。