独占レンタルで非難轟々 死にゆく市場にCCCが放つ生き残り策

――ポップカルチャーの流通を支えてきたTSUTAYAことCCCに異変が起きている。昨秋の『スパイダーマン』独占レンタルをめぐる騒動が顕著だが、コンテンツを自社で独占する方向に舵を切っているのだ。それは消えゆくレンタル市場からの撤退戦だった――?

書店のほか、カフェやイベントスペース、エステなども併設した代官山T-SITE。DVD化されてない古典の名作をソフト化して販売するサービスも話題になった。

 昨年10月、全国にTSUTAYAを展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(以下、CCC)が、映画会社ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント(以下、SPE)から発売される映画『アメイジング・スパイダーマン』など4作品のDVDレンタルをTSUTAYA独占で取り扱うというニュースが大きな話題となった。『アメイジング・スパイダーマン』は興行収入30億円以上というビッグタイトルなだけに、ほかのレンタル事業者は猛反発。14社が原告団を結成し、SPE相手に「ビデオレンタル商品許諾に関する継続的地位の確認」訴訟の仮処分申請を東京地裁に提出した【註】。これまでもCCCは、人気韓国ドラマ『美男〈イケメン〉ですね』や米ドラマ『PAN AM/パンナム』などをプライベートブランド作品としてTSUTAYA独占でDVDレンタルしてきた経緯がある。

 レンタルビデオの大手チェーンにすぎなかったTSUTAYAだが、2011年には東京・渋谷に「代官山T-SITE」を総称する「代官山 蔦屋書店」をオープンさせ都市型店舗のブランディング計画を実現、12年の書籍・雑誌の売上高は1047億円に達し、紀伊國屋書店を抜いて業界1位となるなど、いちレンタル店の規模を超えた躍進が目立っている。さらに、子会社であるカルチュア・パブリッシャーズは映画『キック・アス』などの作品を劇場配給するなど、今や 物流からオリジナルコンテンツへ の路線をたどっているのだ。『スパイダーマン』独占レンタル騒動も、その一環であったといえる。それは、安売り競争で疲弊してゆくレンタル市場からの脱却を狙ったものだった。

「TSUTAYAとしては、競合のレンタル大手GEOが打ち出した旧作全品100円という低価格戦略に対抗するため、価格以外で差別化を図る狙いがあったのでしょう。一部店舗や期間限定でTSUTAYAも100円セールを展開していますが、価格で張り合っていくのはもう限界。低価格競争はレンタル業界全体の破綻を招くだけです。ですが、業界全体で見れば、今回のようなタイトル独占という動きにも疑問を抱かざるを得ません。同業者の利益を損なうだけでなく、独占のせいで作品を観る機会を逃すユーザーが一定数出てくるのは確実ですから。とはいえ、タイトルの人気度に加え独占というキャッチコピーが宣伝効果を生みますし、ユーザーにはTSUTAYA会員であることのメリットを強く認識させることができます。一方、SPE側にもCCC一社が高額でタイトルを買い取ることによって、宣伝費をかけずに一定の流通と収益が見込める利点があるので、このような乱暴ともいえる契約が成立したのだと思います」(映画配給会社社員)

 さらにDVDメーカーの社員は、CCCとSPEが独占契約を結ぶに至った経緯をこう説明する。

「最終的に『スパイダーマン』はTSUTAYAの独占になりましたが、SPEは当初、GEOなど大手レンタル事業者4社にも話を持ちかけていました。しかし金額や条件、業界の仁義などもあり、どこも了承しなかったのでTSUTAYAに落ち着いたようです」(DVDメーカー社員)

もとはSPE側から持ちかけられた動きということで、CCCではないレンタル事業者が乗る可能性もあったわけだ。しかし、これほどまでのビッグタイトルを独占すれば、業界の反発は必至。CCCも批判は承知の上だったのだろう。同社のオリジナル路線への強いこだわりが見て取れる。

「以前にウチも、CCCから別作品の独占の話を持ちかけられたことがあって『もしやらせてくれるなら、ほかのレンタル会社との付き合いもあるだろうし、配給やDVD販売元のクレジットはカルチュア・パブリッシャーズに変えて、御社の名前は出さないでもいいです』と言われました。そんなことしても業界関係者にはすぐバレるので、やりませんでしたけど」(同)

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