AKB48からウルトラマン、糸井重里まで ポップカルチャーを掌握するパチンコマネーの実態

──『エヴァンゲリオン』をはじめ、パチンコ業界と結託することでアニメ業界が潤ったのはよく知られた話だ。しかし近年、パチンコ企業は版権を購入するだけでなく、自ら出資してコンテンツを制作するようになってきた。SKE48を作った京楽、X JAPAN再結成の背後で動いたSANKYO、糸井重里事務所を支えるフィールズなどなど、アイドル・アニメ・音楽・マンガ等、日本のポップカルチャーを支えているのは、実は巨大なパチンコマネーなのだ。今回は、パチンコ企業がそこに見出したうまみと儲けのカラクリを説く。

(絵/河合寛)

SKEを作りAKB本体も掌握48グループで大フィーバー!
■京楽産業
設立/1961年 本社/愛知県名古屋市 代表/榎本善紀
売上高/1908億円(11年6月期決算)

女優・伊東美咲と結婚した三代目社長が率いる名古屋の雄。今をときめくSKE48を直接出資で作り、彼女たちをマネジメントする事務所、ピタゴラス・プロモーションも100%子会社として設立。その後、AKSに出資を行うタイミングで、SKE48のメンバーとスタッフをすべてAKS所属に変更した。現在、AKBを中心とした48グループの命運を握る一大企業であることは間違いない。

X JAPANとマクロスで確変入ります!?
■SANKYO
設立/1966年 本社/東京都渋谷区 代表/筒井公久 売上高/1736億8200万円(12年3月期決算)

一時大量にCMが流された『創聖のアクエリオン』で有名。力を入れているのは、アニメと音楽。『マクロス』シリーズパチンコ化のために同作のアニメ制作会社サテライトを子会社化し、『マクロスF』の誕生に貢献した。音楽については、07年のX JAPAN再結成後に行われた北米ツアーのDVDを、パチンコ店限定でリリースするなどしている(ライブ映像は、CR FEVER X JAPANでも使用)。

ウルトラマン、エヴァ、糸井重里でトリプルリーチ?
■フィールズ
設立/1988年 本社/東京都渋谷区 代表/山本英俊
売上高/1035億9300万円(11年3月期決算)

エヴァンゲリオン台で爆発的ヒットを飛ばした、現在最もポップカルチャーに入れ込んでいるパチンコ企業。円谷プロの子会社化と、それによるウルトラマン関連のコンテンツ制作が目立つ。山本代表はかつて清原和博や朝青龍のタニマチといわれた。また彼は、糸井重里とも古くから交流を持ち、糸井重里事務所の取締役を務めている。なお、糸井もフィールズの社外取締役である。


現在48グループの中でも期待値上昇中のNMB48。京楽が吉本興業と8:2の割合で出資して作られた「KYORAKU吉本ホールディングス」の所属になっている。

 参加人口は1200万人、市場規模は約20兆円。

 昨年2012年度のパチンコ産業全体の統計である。国内自動車業界が年間約43兆円産業という数字を隣に置けば、その市場規模の大きさがわかるかもしれない。あるいはレジャー産業全体の市場が65兆円というデータからも、パチンコ産業がいかにこの国の風土に根付いているか、うかがい知ることができるだろう。

 とはいえ、その莫大な資金が「パチンコマネー」と揶揄気味に呼ばれるように、換金システム自体の合法性がグレーゾーンであることや業界全体に在日朝鮮系企業が多いこともあり、その金の流れはマイナスイメージで語られることも少なくない。またネット上でも愛好者たちを指して「パチンカス」と 叩き に遭う風潮が流行しており、震災後の計画停電の際の石原慎太郎元都知事による「パチンコ全廃」発言に多くの賛同が上がったように、業界に対する風当たりも強まるばかりだ。

 しかしそんな風潮と反比例するかのように、我々を取り囲むモノにも、いつの間にかパチンコマネーの影が差し込んでいることはあまり知られていない。パチンコ愛好者でなくとも、エンターテインメントや各種コンテンツの中で、日々パチンコと密接に関連した作品に触れてしまっているのだ。

「00年代半ばくらいからですかね、エンタメ業界はパチンコマネーなしでは成り立たなくなってきているんです。『ヱヴァンゲリヲン』の新劇場版がパチンコマネーで製作されたことは業界では有名な話ですし、吉本興業主催の沖縄国際映画祭のメインスポンサーが、大手パチンコメーカーの京楽産業であることも周知の事実です。京楽は昨年『ぱちんこAKB48』を発売して、AKBの運営・管理を手がけるAKSに役員を過半数送り込んでますから、国民的アイドルの裏にも巨額のパチンコマネーが動いてる。そして最近では、スポンサーとして単に金を出してるだけじゃなく、制作サイドを抱えこんで、作品やコンテンツの中身にまで口を出すくらいに乗り出してきているんですよ」(業界紙記者)

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