遅々として進まない日本のサイコパス研究に"半グレ"問題 殺人事件が投げかけた問題

『女子高生コンクリート詰め殺人事件』(草思社)

■家族問題の民事不介入と犯罪心理学研究を考える
北九州監禁殺人事件

 2002年3月に北九州市小倉北区で発覚した、一家監禁、連続殺人事件。その犯人として、松永太死刑囚および緒方純子被告の2名が逮捕され、殺された被害者は、ひとりを除く6名が緒方被告の家族であった。その凄まじい残虐性から、当時は報道規制がかけられたほど。一審では両者共に死刑判決を言い渡されていたが、緒方に対しては松永の執拗なDVによる支配があったとして、11年12月、一審の死刑を破棄し、二審の無期懲役が確定した。

 そして、その刑期が確定したと時を同じくして、昨年世間を大きく騒がせた尼崎連続変死事件が発覚する。この2つの事件について取材を続ける豊田正義氏は「両者は非常によく似ている」と前置きした上で、しかし、大きく異なる点もあったという。本文中でも触れた通り、松永が“サイコパス”であった点だ。

「角田美代子には“幸せな家族が許せない”という情念があったと感じるのですが、松永のほうはまったく感情が欠如し、まるでチェスの駒を進めるように淡々と家族を殺し合わせていったのです。彼は絶望もしないでしょうから、角田のように自殺することはあり得ないでしょう」(豊田氏)

 豊田氏は、取材をしていた当時、サイコパスに関しての理解を得るべく『「死体の庭」あるいは「恐怖の館」殺人事件』【10】など、コリン・ウィルソンの書籍をいくつか読んだというが、日本には、それらに対する専門家は皆無だった。

「北九州事件から10年たってもなお、サイコパス研究は進んでいない。事件が複雑化する今、犯人を死刑にしたら終わりではなく、もっと根底を考えていかなければならないと思います」(同)

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