安倍首相肝いりの会議で楽天三木谷がKY発言連発

『成功のコンセプト』(幻冬舎文庫)

「アベノミクス」ともてはやされる安倍政権の経済政策運営。今のところは順調に進んでおり、国民からの評判も上々だ。しかしその裏で、経済政策の具体策を議論する「産業競争力会議」をめぐる不協和音がささやかれている。

 この産業競争力会議とは、安倍政権で成長戦略の司令塔役として設置された「日本経済再生本部」傘下に置かれ、安倍晋三首相を議長に戴き、麻生太郎副総理兼財務相など関係閣僚と民間議員で構成。民間議員には、長谷川閑史・経済同友会代表幹事(武田薬品工業社長)や新浪剛史・ローソン社長などの企業経営者のほか、小泉政権時代に経済財政諮問会議を取り仕切ったことで知られる竹中平蔵・慶応大学教授など学識関係者も選ばれている。2月26日の会合では、TPP参加交渉について「一刻も早く交渉入りすべき」と安倍首相に具申するなどニュースでも話題になったが、ある政府関係者は「三木谷さんが会議をひっかき回していて、浮きまくっている」と語る。

「三木谷さんは『官僚の思い通りにはさせない』という思いが強いようで、民間議員側が会議の主導権を握るように主張してはばからない。本人は大役を任されてやる気満々なんでしょうが、そのため会議がうまく進まなくなっていて、政府側だけでなく民間議員の間からも『困ったものだ』という声が出るようになっている」(政府関係者)

楽天三木谷
1997年に設立された楽天株式会社の創業者で、現・代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏のこと。2012年6月には、自らが先頭に立ち、新経済連盟なる経済団体を立ち上げた。

 実際三木谷氏は2月18日の会合後、記者団に対して「官僚もやりたいことがあると思うが、基本は民間の提案をベースに新戦略を作るのだから、それが具体的にできるようにしないといけない」と発言するなど、官僚主導で会議が進むことを牽制。この発言を伝え聞いた政府関係者は、「会議の進め方まで指示される必要はない」と、憤然とした表情を浮かべた。

 そんな三木谷氏が官僚主導を止めるための“武器”として放ったのが、同会議の事務局に民間出身のスタッフを入れるようにという要請。先述の通り同会議の事務局は経済再生本部であり、経済産業省や内閣府、財務省などから集められた官僚が、議論のたたき台作りや省庁間の調整など会議の下準備を行っている。これに対し三木谷氏は「会議の運営方法として、議事の進行や議事録作り、最終的に報告書を取りまとめるときに民間側の提案がしっかりと反映されないと意味がない」と主張し、事務局への民間スタッフ送り込みを強硬に訴えたのだ。当初、事務局側は「別に民間人のスタッフが入っていなくても、民間有識者の意見はしっかりと取り込める」と拒否したが、三木谷氏は納得せず、最終的に競争力会議を取り仕切る甘利明・経済再生担当相に直談判したのだという。

「甘利大臣も周囲に対して、『別にそんな細かいことにこだわらなくてもいいだろうに』とぼやいていたそうだが、竹中さんや長谷川さんも三木谷さんの提案に同調したことで流れが決まり、経済団体などから民間人スタッフ4人程度が入ることで決着させた。甘利大臣は『ポスト安倍』の座を狙っており、そのためには経済政策を成功させなければならず、産業競争力会議を混乱させないためにも折れざるを得なかったというわけだ」(全国紙経済部記者)

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