──00年代中盤に台頭した「ヒルズ族」の名を継ぐ「ネオヒルズ族」。しかしその中身は、当時のヒルズ族とは驚くほどかけ離れている。その違いと、彼らが今台頭してきた社会背景を、本誌でもおなじみのITジャーナリスト・佐々木俊尚が分析する。
(画/我喜屋位瑳務)
まずそもそも、ヒルズ族とネオヒルズ族は業態がまったく異なります。ヒルズ族とは基本的には、1990年代末のネットバブル終盤に立ち上がり、その後も生き残ったウェブベンチャーを上場させて大金を得、03年にできたばかりの六本木ヒルズレジデンスに入居していた人たちを指しました。当時は「虚業」だと批判されたけれど、代表格のライブドアをはじめ、優秀な技術者を集めて、SNSやデータセンター、ホスティングといったITサービスを新しく作っていた。06年にライブドア事件が起こり、同社のサイトにアクセスが集中してもダウンしなかったのは有名なエピソードですが、堀江(貴文)さん自身も学生の頃からウェブ制作を手がけてきたギークな人だし、その下には小飼弾氏はじめ名だたるプログラマーが集まっていました。この時期に立ち上げられたものが現在に至るまでウェブ業界の礎になっているのは事実で、これは紛れもない実ビジネスです。
一方で、ネオヒルズ族が手がけるのは情報商材の販売が基本。この手のビジネスの流れは、ITベンチャーのコミュニティとはまったく違うところから立ち上がっていて、人材的にも重ならないし、つながりもない。当時のヒルズ族を知る人や、その影響や薫陶を受けたIT業界の人からすれば、「一緒にしないでほしい」というのが正直なところでしょう。ソーシャルゲームをきっかけに、IT企業に対する風当たりが再び強まる中でこうした存在が台頭すると、彼らへの批判がそのままベンチャー全般への批判になってしまうかもしれない、という危惧があります。