大森南朋の兄・大森立嗣がメッタ斬り「日本映画がダメになったのは、客が悪い!」

――2005年、芥川賞受賞作である花村萬月の小説を原作にした『ゲルマニウムの夜』で監督デビューを飾った大森立嗣。しかし、その内容への好評価とは裏腹に、同作の興行は振るわず、およそ5年間、映画を撮っていなかった。しかし、10年の『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』でメガホンを取って以降、この3月には新作『ぼっちゃん』が公開されるなど、順調に作品を作り続けている彼は、現在の日本映画界の実情をどのように見ているのだろうか──。

(写真/江森康之)

──早速ですが、新作『ぼっちゃん』はなんでまた、秋葉原通り魔事件の加藤智大被告というデリケートな題材をモチーフに?

大森 加藤被告が、事件を起こすまでの行動を、自分の言葉で克明に書き込んでいたのがすごく映画的だと思ったんだよ。それで、これを映画にしたら、犯罪を犯す人の心に触れるきっかけになるんじゃないかと。

──書き込まれていたのは、携帯電話サイトの掲示板でしたよね。監督は、ネットもよく見るんですか?

大森 全く見ない。(ネット上でのイケメン、リア充などの階層分けが)嫌いだから。学生時代から、不良とそうじゃない奴、運動できる奴とできない奴で階層分けされていることにすごく違和感を持っていて、その線引きを作る奴と、それに納得してる奴の両方に腹が立つんですよ。

──主人公の梶と田中は同僚からいじめられていて、僕らからすると被害者のように見えるんですけど、そんな彼らをさらに虐げちゃって平気なんですか?

大森 この映画で問われるのは、自分の倫理観じゃなくて、観ている側の倫理観。映画は、わからないものに対してどう接するかが問われるわけで。例えば小説を読んでいて、わからない言葉があると調べるよね? でも、今のお客さんは、知らないことが恥なのに「わかんなーい」って簡単に言っちゃう。思考停止状態で、映画を観ていてもどこを見ていいのかわからないから、すごくわかりやすいカット割りで、目をやるべきところをアップにしてあげないといけなくなってる。知識や教養、経験って、自分で選択して身に付けるものなのに、それができていない。誰かが「映画がつまらなくなってるのは客が悪い!」って言わなきゃいけないのかもしれないね。

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