インテル長友にも闇の手が近づいている!? マフィアとイタリアサッカー界のキケン過ぎる闇

──裏社会、イタリア。その2つのキーワードでまず最初に思いつくのは当然、マフィア。裏社会を牛耳る彼らは華々しいサッカー界を操る大きな存在となっている。八百長や選手・審判への脅迫、そしてクラブそのものにまで浸食しているという。その実態を探るべく、現地在住サッカージャーナリストらに話を訊いた。

『サッカー選手の正しい売り方』(カンゼン)

「2~3年間は、この国のサッカーの試合を中止してしまったほうがよいのかもしれない」

 これは12年5月、イタリアのマリオ・モンティ首相が発表した声明である。06年に起きた、過去最悪の八百長事件と言われる「カルチョ・スキャンダル」に続き、イタリア1部リーグ・セリエAでの八百長事件がまたも発覚。首相が共同声明で怒りをあらわにする事態となった。

 なぜイタリアサッカー界において、八百長という病魔がこれほどまでに蔓延してしまうのだろうか。

 まず大前提として考えておかなければならないのが、現代サッカーは世界的なビッグビジネスになっているということだ。その最先端である欧州サッカー界では、勝敗や結果によって動く金額も桁外れとなる。つまり、もし“なんらかの力”で試合の結果を操作できれば、クラブ側の財政事情を潤す多大なリターンを得ることができるのである。

 たとえば、欧州サッカーでもっとも権威ある国際大会であり、イタリア、スペイン、イングランド、ドイツなど各国リーグ戦の上位クラブが総登場することから世界的な注目を集めるUEFAチャンピオンズリーグ。セリエAのリーグ戦で上位に入ることで出場権を獲得できる同大会は、出場すれば何十億円という莫大な放映権料が出場クラブに入ってくる。それゆえ、おのずと不正がかかわってくる可能性も高まるのである。近年では、10年5月のリーグ最終節、ナポリを下したサンプドリアがチャンピオンズリーグ予選出場権を獲得。ところが、ナポリに所属していたGKマッテオ・ジャネッロが、試合結果の不正操作を図ったことを告白し、処分を受けた。ジャネッロは同チームのパオロ・カンナヴァーロとグラーヴァに「ナポリが絶対に勝たないように」不正を持ちかけたのだ。しかしカンナヴァーロとグラーヴァは八百長を拒否した。ただ、イタリアサッカー連盟へその報告義務を怠ったことで6カ月の出場停止処分が下った。

 もちろん不正は上位クラブだけではない。下位に低迷しているクラブもこういった問題に直面せざるを得ない現実がある。2部リーグにあたるセリエBに降格すれば、収益や観客動員数など、多くのものを失う危険性に晒されるからだ。当該クラブにとって、残留か降格かは生きるか死ぬかの問題になる。ならば残留のためには手段も問わなくなり、そこに“黒い力”が介入し始めるのも想像に難くないだろう。

 たとえば、12年4月に逮捕された元U‐20イタリア代表DFのアンドレア・マシエッロ。彼はバーリというクラブに所属していたシーズンの数試合で八百長行為に関与していたことを自白した。対戦クラブのレッチェとのダービーマッチで、5万ユーロ(約500万円)の見返りで、わざとオウンゴールを献上したことを自供したのである。八百長を持ちかけた人物は、レッチェの元会長ピエランドレア・セメラーロ。彼はセリアA残留のために30万ユーロ(約3000万円)を用意し買収工作を行ったという。また、この一件をめぐっては、不法な賭けに参加していたマシエッロの友人2人も逮捕されている。

 一方、マシエッロと共にバーリでプレーし、現在チェゼーナというクラブに所属しているマルコ・ロッシも八百長の調査対象となった。そのロッシは捜査当局に対し、複数クラブの「ウルトラ」と呼ばれる熱狂的サポーターから八百長を持ちかけられたと語っているという。しかしロッシは、脅されても選手たちは八百長の要求に従うことはなかったと身の潔白を語っている。

 いずれにせよ、熱心なサッカーファンにとってはつらい現実かもしれないが、かねてより八百長行為が常態化し続けてきているのが、イタリアサッカー界の現状なのである。

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