村上隆の過去、夏フェス批判、禁断のジャニーズ楽曲ガチレビュー 「サイゾー」的カルチャー特集

湯浅 学氏の『音楽が降りてくる』(河出
書房新社)

――1999年の創刊以来、芸能界から政財界、ヤクザにIT業界まで、各業界のウラ側を見てきた「サイゾー」。巷間騒がれる小誌の魅力をもっと多くの人に知ってもらいたい! そんな思いから、「サイゾー」を愛読している物好きな(失敬!)有名人からおなじみの識者の方々に、「サイゾー」でしか読めないオススメ記事を選んでもらう『あの有名人&識者が選ぶサイゾーレコメンド!』企画。その番外編として、「サイゾー」編集部員が、「サイゾーpremium」でのオススメ記事を選んでみました! 今回は、某カルチャー誌出身の編集部員が手がけた「サイゾー」らしくない(?)カルチャー記事を紹介します。

 私がサイゾーに関わり出したのは3年半ほど前。それまで某カルチャー誌の編集部に在籍していたのですが、リーマン・ショックのあおりをモロに受けてクビを切られてしまい(ほどなくして雑誌自体も休刊)、路頭に迷いかけていたときに、「ウチで仕事してもいいよ」と救いの手を差し伸べてくれたのが、現編集長(当時は副編集長)のIさんでございます。サイゾーにはゲスなイメージがつきまといがちですが、内部にはそんなちょっとイイ話もあったりするんですよ。

『フジロック、サマソニ、ライジングサン……利権と欲望が絡む夏フェス裏ガイド』
(2009年8月号第2特集)

 ともあれ、こうしてフリー編集者としてサイゾーで仕事するようになったのですが、Iさんに初めて提案したのがこの特集。まだサイゾーでの勝手があまりわからなかったため、至らぬ点は多々ありますが、日本で最初に夏フェスをがっつり“批判”した企画ではあると思います。ここで指摘されているフジロックの観客の高齢化は、ますます進行しているみたいですね。ヘッドライナーが得てして再結成バンドや90年代のロック・スターだからでしょうか。

『大人のためのヒップホップ講座』
(2010年7月号第2特集)

 その後、カルチャー系の企画を手がけることが多かったのですが、だんだん欲が出てくるといいますか、自分の趣味趣向がやや強く出てしまうこともしばしばありまして……。しかし、それをうまく昇華できたものの一つがこちらの特集ではないかと。このときは先ほどの夏フェス特集のように批判するのではなく、“日本語ラップ”というドメスティックなヒップホップ・カルチャーをむしろ持ち上げました。え? あんなの黒人の猿真似? いまだにそう思っているとしたら、かなり遅れていますね。もうそんなレベルの文化ではないことを、お読みいただければわかるはずです。そういえば、現代思想家の佐々木中さんと音楽ライターの磯部涼さんの対談で言及されていたANARCHYと鬼というラッパーが、“2011年10月7日”付けの朝日新聞の記事「下流リアルに新世代ラッパー」で取り上げられていましたね。同紙の記者は本特集を参考にしたのでしょうか。また、文芸誌「新潮」(新潮社)では“2011年6月号”より都築響一さんが「夜露死苦現代詩2.0 ヒップホップの詩人たち」という連載をはじめました。まあ、今日本で最も刺激的なカルチャーであることは間違いないので、その息吹を伝えようとする動きが相次いだ、ということにしておきましょう。


初代ジャニーズからHey! Say! JUMPまで 湯浅学、松本亀吉らが選ぶジャニーズ半世紀のベスト・シングル40!』

(2010年10月号「勝手にジャニーズ救済計画」【本気のレビュー! 歴代ジャニーズ・ポップの真骨頂】より)

 過去にサイゾーが何度となくジャニーズのタブーに迫ってきたのは周知のとおりですが、その数々の楽曲をマジメに分析する記事はほとんどなかったことを知り、このときあえて作成したのが『本気のレビュー! 歴代ジャニーズ・ポップ』というページです。これはその中の一記事でして、湯浅学さん、岸野雄一さん、松本亀吉さん、南波一海さんというポップスの目利きに、良くも悪くも聴くに値するヒット・シングルを40曲選んでいただき、それぞれ100字でレビューしていただきました。今や音楽に限らず映画、本、アニメなどネット上で誰でもレビュアーになれる時代ですが、100字という短い文字数で“うまいこと言う”のは誰でもできる芸当ではありません。それをとりわけ実感できるレビューを1本ご紹介しましょう。「君たち女の子/僕たち男の子/ヘイヘイヘイ~」というあの歌い出しではじまる、郷ひろみの『男の子女の子』(72年)について書かれたものです。
“その後のジャニーズはすべからくこの曲の注釈。人類生存原理を幼児にも理解可能な姿勢からあからさまに表現した〈種の起原歌謡〉。陽気で明朗で平易だからこそ深奥の不易を伝えることができる。超越の傑作。”

 この手書き原稿のファックスが湯浅さんから届いたとき、腰を抜かしそうになった覚えがあります。

『FumiYARtをリスペクトするのも戦略? メディア受けを狙いすぎた村上隆の90年代』
(2010年11月号「オタク産業【裏】レポート」【美術雑誌が絶対書かない村上隆批評】より)

 ここまで音楽関連の記事ばかりでしたので、最後にこちらをオススメしましょう。村上隆さんのプレゼンスが増したのは、「スーパーフラット」という概念を提唱された2000年代以降ですが、90年代より現代アーティストとしてご活動されておりまして、当時の村上さんについて『岡崎京子の研究』(アスペクト)の著者であるばるぼらさんに分析していただきました。村上氏の意想外な発言や交友関係に驚くかもしれません

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