東大教授・島薗進の要チェック宗教団体――宗教が”公共”に関わる流れに、創価学会は協調できるか

――00年代以降、日本社会において宗教はかつてほどの力を持たなくなったといわれてきた。だが、いまだに不穏な動きを起こす団体は日本各地に存在している。今、日本の宗教界で注目しておくべき“ヤバい”団体はどこなのか? 学者、ジャーナリスト、ウォッチャーら、宗教界を注視し続ける人々に聞いた。

[東京大学大学院人文社会系研究科教授]
島薗 進(しまぞの・すすむ)
1948年、東京都生まれ。宗教学者。東京大学大学院人文社会系研究科教授。近代以降の日本の宗教史の研究を中心に、世界の諸地域の宗教のあり方の比較研究を行う。近年は死生学の研究に取り組む。近著に『日本人の死生観を読む』(朝日新聞出版/湯浅賞受賞)など。

目が離せない団体【1】

一大勢力を誇るだけに、学会の動向は今後の宗教界の方向性を左右するはずだ。(絵/沖 真秀)

創価学会
[注目の理由]
日本最大の新宗教である創価学会は、これまで「他教は邪宗である」とし、創価学会の教えのみが正しいとしてきた。しかしそれでは、伝統宗教はじめ各種団体が手を取り合って、社会における「宗教」の役割を考えていこうとする現在の流れに乗れない。「社会に役立つ宗教界」の実現のためには、規模の大きい学会の協調がカギを握る。

 ここ数年の日本においては、宗教が大きな力を及ぼすケースが少なくなっています。日本最大の新宗教である創価学会も会員が伸び悩んでおり、一時のような勢いはありません。

 しかし、最近になって社会のほうが宗教に何かを求める傾向が出てきています。一番わかりやすいのが人間の死について。人は死んでいく時に精神的なよりどころを求めるものですが、治せない病気がある以上、医療だけではケアしきれない部分があります。最終的には、そこに宗教的なものの見方や価値観を介在させるしかない。足元では高齢化社会が着実に進行し、たくさんの方が亡くなった東日本大震災も発生しました。また、日本は自殺者の割合が多い国でもあります。死生観を考えるシーンが増えたことで、宗教の大切さが再認識されているのです。

 さらに、生命倫理の観点からも宗教文化の重要さが増しています。iPS細胞の発見でもわかる通り、科学技術が発達して新しいことができるようになってきている。しかし、それで人間が幸せなのか、あるいはどこまで人間が踏み込んでいい技術なのかを判断する力は科学自身にはありません。原発も同様ですが、合理的な知だけでは判断できないような問題について、価値観を踏まえて考える人、現代的な問題に合わせて価値観を展開する人が社会から求められています。実際に、ドイツの「安全なエネルギー供給に関する倫理委員会」にはキリスト教教会関係者が数人参加しています。

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