マンガ家・田中圭一が選ぶ「サイゾー」記事――他誌では書けないマンガ業界のナイーブな話

田中圭一氏。

――1999年の創刊以来、芸能界から政財界、ヤクザにIT業界まで、各業界のウラ側を見てきた「サイゾー」。巷間騒がれる小誌の魅力をもっと多くの人に知ってもらいたい! そんな思いから、「サイゾー」を愛読している物好きな(失敬!)有名人からおなじみの識者の方々に、「サイゾー」でしか読めないオススメ記事を選んでもらいました!! 今回のキュレーターは、マンガ家の田中圭一氏。手塚治虫タッチで、下ネタの限りをつくす『神罰』が大ヒット。「サイゾー」では教えてっ真夢子おねーさんを執筆後、現在は未来からのシナン ~目指せ! アタリーマンを連載中。その後も、精力的に活動を続けていらっしゃいます。そんな田中氏に「サイゾー」でお気に入りの記事を選んでいただきました。

あの大ヒット作の担当で社員同様に働いて給料はわずか! マンガを支える「編プロ」の実態
(2012年12月号特集「タブーなマンガ」【マンガ編集者が匿名で語るマンガ業界の未来】より)

「サイゾー」の魅力は、一般誌ではなかなか踏み込めない「ここまで書くかよ!」っていうところまで記事にしてしまうところですよね。やはりマンガ家の僕としては編集プロダクションの実態に迫ったこの記事が気になりました。

 サイゾーでの前連載教えてっ真夢子おねーさん出版社には、もはやマンガ編集者なんていらない?でも取り上げたんですが、今マンガ編集者は大手の出版社の中でも優秀な編集プロダクション社員やフリーの人が中核になっているんです。そういった人々が、超人気作などを世に送り出している。一方で、業界としては大手の出版社にマンガ編集のノウハウが残らないことが問題になっています。「ダ・ヴィンチ」とか「コミックナタリー」では書けない、こういったマンガ業界のダークサイドの実情を取り上げることは、その業界を正しく見ることにつながるし、業界への一種の警告にもなるわけです。それはマンガ業界だけではなく、あらゆる業界についていえるでしょう。マンガ業界内でも編集プロダクションの話は、給料などを含めてナイーブな部分が大きいんだけれども、こうして実態を書いてくれるというのはやはり魅力だと思いますね。

『DANDY長瀬ハワイの「セクハラAV問答」』
(2011年9月号より連載)

「サイゾー」は大企業の闇とか政界の闇とか、ジャニーズ・芸能界の裏側といった社会の暗部を書いたりしていますが、まず文字量がものすごく多いですよね(笑)。最近の雑誌は、文字が少ない傾向にあるけど、その反対をいっている。文字ががっつりあって、しかもその内容もダークなことばっかりだと気が滅入っちゃうじゃないですか。そんなときにAV監督の素人女性との対談とかを読むと和むんですよね(笑)。特にこういう"俗っぽい"連載は面白いですね。ほかにも、花くまゆうさくさんのカストリ漫報とか写真を大きく扱っている写真時評 ~モンタージュ 過去×現在~など、こうした箸休め的な連載記事があるとホッとします。雑誌全体のバランスとして悪くないと思います。

『徳光正行と岩井志麻子の愛のズルむけい地』
(2011年4月号まで連載)

 僕が強烈なインパクトを受けたのがこの連載ですね。何より岩井志麻子先生のキャラ立ちが素晴らしい。女性有名作家の方って西原理恵子さんしかり、みんな中におっさんが住んでますよね。韓国人の旦那さんのお話とかもしていらっしゃいますけど、若いツバメを囲うっていうところもおっさんの発想ですし(笑)。

 岩井さんの本業はホラー作家ですが、やはり実体験を元にした話というのは強烈で面白い。下ネタもホラーもそういう実体験がベースにあったほうが生生しくて笑えますね。

 あと、岩井さんは『笑っていいとも!』とか昼間の番組に出ていても、恥じらいもせずに堂々と下ネタを言うじゃないですか。僕はあっけらかんと下ネタを言う人が好きなんです。そういう意味で、僕の作品のテイストに似ている部分があるかもしれません。それこそ「サイゾー」の企画とかで対談とかしてもいいかも。

田中圭一(たなか・けいいち)
大阪府出身。学生時代に「ミスターカワード」でデビュー。大学卒業後は某玩具メーカーに就職し、転職を繰り返すが、現在も、サラリーマンとの「兼業漫画家」という肩書は変わらない。代表作に『神罰―田中圭一最低漫画全集』(イースト・プレス)、 『ドクター秩父山』、『死ぬかと思ったH』(共にアスペクト)、『セクシィ古文!』(メディアファクトリー)などがある。「サイゾー」での前連載『教えてっ!真夢子おね~さん』の単行本が近日発売予定。

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