ビデオジャーナリストと社会学者が紡ぐ、ネットの新境地
本間 龍氏の著書『電通と原発報道』。
[今月のゲスト]
本間 龍(ほんま・りゅう)[著述家]
「マスメディアの報道は、スポンサーや広告代理店の圧力を受けている」。こうした言説によって指摘される「広告圧力」の問題は、ネットを中心に批判されてきた。ややもすると陰謀論に回収されてしまう同問題の実態とは? 自身も大手広告代理店の元社員であり、同問題に切り込んだ『電通と原発報道』の著者である本間龍氏に、話を聞いた。
神保 原発事故以降、マスメディアの信頼性が大きく揺らぐなかで、直近ではiPS細胞にまつわる読売新聞の誤報や、橋下徹大阪市長の批判記事をめぐる週刊朝日の謝罪騒動などがありました。この機会にメディアの問題――今回はとりわけ「広告圧力」をテーマに議論をしていきたいと思います。
国民にとって重要な問題でも、そこにスポンサーが絡むと報じられなくなってしまうのはなぜなのか。まさに広告圧力の問題に切り込んだ『電通と原発報道』(亜紀書房)の著者で、元博報堂営業部に勤務されていた著述家の本間龍さんが、今回のゲストです。この本は、当然のようにマスメディアではまったく紹介されていませんが、それでも1万5000部以上、売れているとのことですね。
宮台 こうした本の内容を伝えないことで、かえってマスメディアの権威が失墜します。原発推進勢力が情報を隠蔽することで、原発行政への信頼を失墜させ、かえって原発推進を困難にすることに似ています。
本間 売れても取り上げられないのは、やはり電通と博報堂の名前が出てくるのが原因でしょう。「デンパク」という名前を出すことに対するメディアの自主規制は、強烈なものがあります。
神保 あらためて、この本を書こうと考えた経緯とは?
本間 3・11の原発事故以降、テレビを見ていて、まともな報道がないことを目の当たりにしました。インターネット上では「マスゴミ論」が展開されましたが、マスメディアが重要な問題を報じられない背後には広告代理店があり、その後ろにクライアントがあるという仕組みは、実はわかっているようでほとんど知られていません。「報道したくてもできない」という縛りの存在に触れ、そのカラクリを解説している本がほとんどなかったので、その体験者である自分が書かなければと考えました。
神保 原発事故をきっかけに私たち一般市民は、事故後の報道だけでなく、事故前の報道においても、原発について正しい情報が伝えられていなかったことを知りました。
宮台 マスメディアを通じて日本国民は、日本にしかないデタラメな神話を信じ込まされました。「絶対安全」神話であり、「全量再処理」神話ないし「いつかは回る核燃料サイクル」神話、「原発は安い」神話などです。これらはパーフェクトなデタラメであることがバレました。