JASRAC、音事協、レコード会社……誰もオイシクない!? 違法ダウンロード刑事罰化の真相

──10月頭より施行となった、いわゆる違法ダウンロード刑事罰化。ネットユーザーからは大きな反発とおびえの声が上がっているが、そもそも誰のどのような目的によって、この改正著作権法は成立したのか? そして、下降線をたどる音楽産業は今後どうなってしまうのか?

違法ダウンロード刑罰化に関する啓発活動を行うた
めに設立された「STOP!違法ダウンロード広報委員会」による特設サイト。

 10月1日、いわゆる違法ダウンロード刑事罰化が施行された。正確には、改正著作権法119条3項の「私的違法ダウンロードの罰則化」のことだが、違法にアップロードされた音楽・映像をそうと知りながらダウンロードをした者(当特集【2】のコラム参照)に対して、2年以下の懲役または200万円以下の罰金、あるいはその双方が科されることになった。9月10日には「STOP!違法ダウンロード広報委員会」が設立されたが、メジャー・レーベルを取りまとめる日本レコード協会をはじめ、音楽・芸能事務所が加盟する日本音楽事業者協会、作品の使用許諾や使用料の分配などを通して著作権を管理するJASRAC(日本音楽著作権協会)……と、構成団体のほとんどが音楽関係の権利者団体。IFPI(国際レコード産業連盟)が「全世界でダウンロードされた音楽ファイルのうち、合法のものは5%のみ」と発表するように、世界的に違法ダウンロードは横行しているが、それこそが日本の音楽業界の低迷と著作権や著作隣接権の侵害を招いていると見なす彼らの意図が、刑事罰化の背景には透けて見える。だがネットユーザーからの反発は大きく、今年6月の法案可決時には国際的ハッカー集団のアノニマスが日本政府やレコード協会のサイトへサイバー攻撃を仕掛ける事件も。そんな刑事罰化は結局、誰にとって得な話なのか? そして、低迷する日本の音楽産業に何をもたらすのか?まずは法案成立までの経緯を整理しよう。

「違法にアップロードされた音楽・映像をダウンロードする行為が違法になった2010年施行のいわゆる『ダウンロード違法化』は、通常の著作権法改正と同様に文化庁内の文化審議会で合意を得てから内閣に通しました。ただ、“刑事罰はナシ”という理由もあって文化審議会をギリギリ通過した法案であり、それを数年後に“刑事罰アリ”に改正するのが難しいと考えた一部権利者は、文化審議会を通さず、国会議員にロビー活動を行い、議員立法という形で秘密裏に今回の改正法を進めた。これによって多くのネットユーザーから批判が巻き起こりました」

 こう話すのは、著作権に詳しい骨董通り法律事務所の福井健策弁護士。CDの売り上げが98年のピークから約3分の1に落ち込んだ現在、その埋め合わせをすると期待されていた着うたや着メロの売り上げは上げ止まり、iTunesも近年は横ばいだという。そうした状況と違法ダウンロードの蔓延に対する危機感から、レコード協会は強硬手段に踏み切ったのだと思われる。とはいえ刑事罰化の後、音楽産業が回復しなければ意味はないが……。音楽ライターの磯部涼氏は、次のように分析する。

「日本の音楽市場の売り上げは11年上半期、アメリカを抜き、全世界で1位になった。しかし、依然減少傾向ですし、背景には日本が今も単価の高いCD大国であると同時に、他国と比べてネット配信が遅れていることがあります。そんな国で違法ダウンロードへの締め付けを強めただけでは、業界の回復は望めません」

今すぐ会員登録はこちらから

人気記事ランキング

2024.11.22 UP DATE

無料記事

もっと読む