アップルの行動原理を探る――新CEOのもと超高学歴エリートたちが激烈な社内政治を展開!?

──テザリング、LTE等々でau vsソフトバンク直接対決第二弾の話題を振りまきつつも、サムスン相手に訴訟合戦を繰り広げ、時価総額世界1位を誇示する、現代最強のスーパー企業、アップルの行動原理とは?スティーブ・ジョブズの跡を継いだティム・クックは、アップルをどのように変え、どこへ導こうとしているのか? 内部の声と外部からの分析で読み解く、最新版アップル読本!!

「内部のほころび」編
■カリスマ性なき新CEOのもと超高学歴エリートたちが激烈な社内政治を展開!?

(絵/沖真秀)

 9月21日、アップルの最新スマートフォン「iPhone5」が世界同時発売された。旧機種から変更されたデザインは完成度が高く、新世代の通信規格「LTE」への対応やCPUの性能アップなど機能面も充実しており、発売開始後の3日間だけで世界で500万台を販売するほどの人気ぶり。その結果、「ジョブズなき後もアップルの成長神話は止まらない」と、多くの人々に強いイメージを植えつけることに成功した。

 しかし、iPhone5の周辺に目を向けると、これまでのアップルとは異なるところも見えてきている。

 例えば「情報漏れ問題」。アップル新製品に関するリーク情報は以前から日常茶飯事だったが、iPhone5に関してはことのほか多く、発売数日前には製品の全体像がほぼ判明してしまっていた。また、iPhone5と同時発売された新iPod touchと新iPod nanoについては、その垢抜けなさにユーザーから「手抜きではないか」「ソニーのウォークマンみたい」との声が上がっている。そして最大の問題が、iPhone用の新しい地図アプリの完成度の低さ。駅の位置がずれたり施設や建物の名称が間違っていたりと、実用レベルとはいえないありさまに、CEOのティム・クックがユーザーに直接謝罪、改善するまで他社の地図利用を薦めるという、なんとも情けない事態となった。

 創業者にしてCEOだったスティーブ・ジョブズが世を去ってから1年が過ぎた今、アップルはどこが変化したのか? アップル内部の変化と、外部に対するアクションの変化、その両面から追ってみよう。

「地図のトラブルは、ジョブズがいても起きたと思う」と語るのは、今春『僕がアップルで学んだこと』(アスキー新書)を上梓、92年からアップルに16年間勤務して米国本社でシニアマネージャーも務めた経験がある松井博氏だ。

「ジョブズはあまりクラウドサービスを理解できていなかったのではないか。そのせいでアップルはクラウドに出遅れ、今でもクラウドが弱い」

 デバイスの開発に関しては天才的な判断を見せたジョブズだが、その後ろで動き大量のデータを蓄積して処理する必要があるクラウドサービスにはあまり理解を示さなかったという。松井氏も「今の時代、クラウドはそれだけで独立したチームが開発に当たるべき重要事業ですが、アップルの組織ではiOSチームの下にあるらしい。それではグーグルにはかなうはずがない」と厳しい評価を下している。

 では、iPod touchやiPod nanoのデザインに対する評価はどうなのか?

「iPodシリーズは、もはやアップルの主力製品ではない。最も売れているのがiPhoneで、多くのユーザーはiPhoneで音楽を聴いている。iPodシリーズのデザインには、もはやiPhoneほどコストは掛けられないということです」と松井氏は語る。つまりiPodのデザインが“劣化”したとして、それはアップルが変化したためではなく、市場の変化によって携帯音楽プレイヤーという商品ジャンルの位置づけが変化した結果にすぎない、というわけだ。

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