放射線検査をしないコメが市場に流通──不安視される食品業界のタブー構造

──福島県産農作物が売れているという。

『食品業界は今日も、やりたい放題』(三五館)

 原発事故の影響で、首都圏ではスーパーなどの小売店で福島県産農作物を見る機会はほとんどない。当然出荷量もガタ落ちのはず……と思いきや、日経新聞などの報道では2011年度のコメの出荷量は、例年の7割程度を確保しているという。店頭では見かけることがないのに、いったいどこに出荷しているのだろうか?

「福島県産米は、主に首都圏の外食店やせんべいなどの加工食品メーカーで使用されているんです」 と話すのは、ジャーナリストの吾妻博勝氏。『コメほど汚い世界はない』(宝島社)を執筆したコメ流通のエキスパートだ。

 いまや日本では、手軽で安価な食品が氾濫している。オペレーションシステムの改善や人件費の削減などの企業努力で、1円でも商品の原価を切り詰め価格競争に立ち向かう食品産業にとって、味自体は問題がなく、値段も割安となった福島県産農作物は、まさに渡りに船。消費者としても、11年にはサンプリング調査だった放射性物質の検査が、全袋検査へと移行し、しっかりとした検査を行っているんだから大丈夫だと安心する向きもあるが、吾妻氏は「あれだけ検査の様子が報道されれば、すべてのコメが検査されていると“誤解”する方も多いのではないでしょうか」と話す。

「今年度米で全袋検査をしたのは、8月に収穫した早場米の一部だけ。さらに、9月下旬から収穫が始まる米で全袋検査されるのは、主としてJA経由の流通米のみです。農家が業者に直接販売する米は全体の5割以上にも上り、それらは検査もされずに流通するものが多い。業者が農家にトラックを横付けして直接買い取り、そのまま激安居酒屋や、加工食品業界へ出荷されるんです」(吾妻氏)と、非正規のルートでコメや農作物が流通しているというのだ。中間マージンを削るため、農家と直接契約を謳っている企業も多い。

「食の安全」が叫ばれて久しいが、O-157など頻発する食中毒や発がん性物質の混入など、消費者は食に対して疑心暗鬼にならざるを得ない状況が続いている。特に「デフレ食品」とさえ呼べる一連の激安フードは、その安さと引き換えに、こうした安全性が不透明な製品も使用されている。

 例えば、かねてから発がん性物質などの危険性が指摘されている食品添加物は、激安フードにとってなくてはならない存在。ハムやベーコン、そしてハンバーグなどの加工食肉には保存料をふんだんに使用することで、流通経費や廃棄リスクを抑制し、合成着色料で新鮮な見た目を演出、化学調味料で味を調えている。合成甘味料のズルチンや合成保存料のフリルフラマイドなど、即座に健康に被害が及ぶものに対しては、厚生労働省も規制を行なってきたが、“ただちに健康に被害がない”ものには、審査も甘い。長期的に摂取し続けた場合や、ほかの添加物と混ぜ合わせた場合のリスクに関しては、安全性が疑問視されるデータが民間の機関から出ていても、そのままにされているものが多い。

 また、いまだに安全性が疑問視される遺伝子組み換え農作物も、激安価格を実現するためには欠かせない。通常の作物よりも生命力が強靭で、収穫量も高いことから価格が安いのだが、その不信感は根強く、一部からはアレルギー、臓器異常、不妊、発がん性などの可能性も指摘されている。

 遺伝子組み換え作物については、アメリカの農薬会社モンサントの日本進出が話題となっている。同社はすでに茨城県に実験農場を建設している。内部で見たことを口外しないという誓約書を書かされた上で、この農場を見学した人物は、その内部の様子を振り返った。

「周囲から完全に隔離された施設の内部には遺伝子組み換えの作物と、普通の作物が並んでいました。除草剤の効果で、普通の作物はほとんど枯れているのに対し、遺伝子組み換えのほうはピンピンしていた。『どうですか?』と自信満々に聞かれましたが、正直気持ちが悪かった」

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