原子力村利権の構図がここにも……トンデモかそれともタブーか!? 電磁波問題に迫る

『携帯電話でガンになる!?』(緑風出版)

 原子力の利権に群がる人々を指す「原子力村」という俗称があるが、同様の構造は「携帯電話電磁波」にも存在する。国際機関がその危険性を指摘し、国内でも被害の声が出ているのに、なぜその情報が国民に届かないのか。時に、“トンデモ”“疑似科学”などと揶揄される電磁波の問題とタブーに迫る──。

 携帯電話での通話はもとより、無線LANの普及でスマートフォンやパソコンでも高速データ通信が可能になるなど、我々の生活をより便利にしている電波網。こうした携帯電話などから発せられる電磁波に「発がんの危険性」が指摘されていることをご存知だろうか。電波を携帯電話に送信する基地局の周辺で頭痛、不眠、吐き気などの症状を訴える人も増えており、海外では大きなニュースになっている。

 だが、その詳しい内情を知る人は少ないはずだ。この電磁波に関連する問題は歴史も浅く、確固たる根拠も見えにくいため“トンデモ”と片付けられることが多いのは事実。しかし実は、携帯電話会社を中心とした「電磁波村」が、真実を隠しているという指摘もあるのだ。

 では、電磁波の危険性とは、具体的にどのようなものなのか。まず国際的な視点で現状を説明すると、2011年5月に世界保健機関(WHO)に属する国際がん研究機関(IARC)が、携帯電話から出る高周波の電磁波について「発がんの危険性あり」との評価を下している。

 以前から携帯電話の電磁波の危険性を示す研究結果や実際の健康被害の訴えなどはあったが、WHO所属機関が公式に評価を下したインパクトは大きく、電磁波問題の報道が少ない日本でも、一部のワイドショーがこのニュースを取り上げる事態となった。

「これまで国や産業界は『携帯電話の電磁波が危険という証拠はない』と言い張ってきたわけですから、彼らの主張が崩されたことになります。NTTドコモ(以下、ドコモ)などの携帯電話会社は、そのワイドショーで『発表は真摯に受け止めるが、自社の携帯電話は国際基準値以下なので安全だ』という旨のコメントを出しましたが、それは事実として誤りです。IARCが『発がんの可能性あり』と評価を下したのは、携帯電話のヘビーユーザーにおいて、脳腫瘍のリスクが増えるという証拠が出てきているため。そのため現状では、基準値をクリアした携帯電話だとしても、それを使い続ければ安全とは言えないわけです」

 そう話すのは、電磁波をはじめとした環境リスクの問題に詳しい、科学ジャーナリストの植田武智氏。

 一方海外では、電磁波に対する危機意識は高く、07年に欧州に住む2万7000人を対象に行われたEU公式の意識調査によると、「携帯電話や基地局から発射される電磁波が健康に悪い」と考える人の割合は3分の2にもなっている。そして各国の公的機関も電磁波の影響に対し、警鐘を鳴らしているのだ。

 たとえばフランス政府は、頭蓋骨が未発達で電磁波の影響を受けやすいとされ、一生涯で携帯電話の電磁波に触れる時間も長くなる若年層への対策として、子ども向けの携帯電話のCMを法律で禁止。「生殖器の近くには置かない」「妊産婦は使わないように」との警告も発している。

 またイギリスの教育省は、16歳未満の携帯電話使用の抑制を告知している。

 ドイツやカナダでは、携帯電話を販売する際、その機種の電磁波の強さを購入者に対して表示することが義務付けられており、ユーザーは数値の低い機種を選ぶことができる。携帯電話を頭から離した状態で使用することを推奨するため、イヤホンマイクとセットでないと販売できないという規制もあるのだ。

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