──ここまでは、楽天の歩みや社会とのつながりなど、外側から三木谷氏を検証してきた。では、実際に社内で働く社員たちは楽天をどう見て、どう感じているのか?離職率も高いといわれる同社の社員に話を聞くと、やはり相当不満がたまっているようで……。
同社の基幹事業でもある楽天市場。ある社員からは「まるでチラシの裏。センスのかけらもない」との酷評が……。
新経連の立ち上げや海外事業への取り組みなど、精力的にフィールドを拡げようとする三木谷浩史社長に対して、社内の目はどこか冷ややかだ。社員・元社員に聞く、楽天の今後の課題とは──?
「TBS買収や球団立ち上げの際は、社内も盛り上がりました。でも、新経連に関して興味を持っている社員は少ない」
こう話すのは、30歳の楽天・男性社員。11年6月に「電力業界を保護しようとする態度が許せない」などの発言を残し経団連から退会した楽天は、ちょうど1年後に「新経済連盟」(以下、新経連)を発足することとなった。「経団連に対抗するつもりはない」と三木谷浩史社長は言うが、ネット選挙活動や薬販売規制緩和など、経団連の方向性とは異なる提言を行っていくことは間違いない。
だが、世間では注目が集まっている新経連の立ち上げに関して、社内での関心はまったく薄いものだという。この理由について、前出の男性社員は「社員の肉体的・精神的疲労」を挙げる。「そんなことより、今目の前にある数字をどうするかに追われている」というのだ。
「毎日仕事が山積みで、終電で帰れたら早いほう。それなのに週に一度、全社員が参加することで有名な『朝会』は8時から。近くのマンガ喫茶で仮眠を取って出社する社員もいる」(37歳/男性元社員)
「『朝会』は一応『任意』だが、『任意』と書いて『強制』と読む(苦笑)。朝会の欠席者が出ると、その社員を管理しているリーダーやマネージャーの査定に響くから絶対休めない。これはうちの部署だけかもしれないが、熱があって休んだとしてもマイナス査定になるので、相当しんどいですよ」(34歳/男性社員)
時間に厳しく規律を重んじることで有名な三木谷社長のこうした“体育会系”な運営手腕について、多くの社員や元社員から異口同音に聞かれるのは「心身を病む人も多かった」という言葉。
拘束時間に加えて過酷なのは、楽天の根幹を支える事業であるインターネットショッピングモール「楽天市場」など一部の部署に与えられる売り上げ目標だ。
「楽天カードは、ずっと前から営業に力を入れている。ノルマがきつく、いい加減天井がありそうなものなのに、『日本の人口1億2千万人なんだから1億2千万枚売れ』って感覚。実際にそう言われるわけではないが、そういうノリなんです」(同)
「とてつもなく大きな数字を提示されて、それを期間内にこなさなければならない。三木谷社長が出す数字は絶対なので、管理側はそれを下回らないよう、部下に振る際に額をサバ読んで底上げするんです。例えば社長からマネージャーに提示される額が1000万円だとしたら、マネージャーはリーダーに1100万円、リーダーはユニットリーダーに1200万円、ユニットリーダーはヒラに1300万円と提示する」(前出の30歳社員)
特に楽天市場の強化期間に充てられた10年は離職率が高く、ある部署では配属されたうちの4~5割が退職したという。