須田慎一郎(すだ・しんいちろう)
1961年、東京都生まれ。経済ジャーナリスト。経済紙記者を経て、現職。政財界に精通しており、『ワイド!スクランブル』(テレビ朝日)の火曜コメンテーターとしても活躍。近著に『暴力団と企業 ブラックマネー侵入の手口』(宝島社新書)がある。
──今回は「三木谷浩史が日本を変えるのか」というテーマですが、まず、現在までの三木谷氏の功績についてはどうお考えでしょう?
須田慎一郎(以下、須) 正直なところ、功績が思いつきません。もちろん、ネット通販という事業をいち早く立ち上げて、業界トップに育て上げたわけですから、ビジネスセンスがあったのは間違いない。でも、楽天というビジネス形態は、三木谷がやらなかったとしても、ほかの誰かがやっていたはずです。
しかも、楽天は登場時こそ日本の流通に変化をもたらしたのかもしれませんが、それで終わり。その後は、ユーザーを囲い込んで減らさないための施策しか行っていません。
──とはいえ、三木谷氏はIT企業として経団連に加盟するなど、財界での存在感は小さくないですよね?
須 彼はなんだかんだ言って、日本興業銀行出身のピカピカのエリートですから。財界人にしてみれば、自分たちと同じ側の人間なんです。
──そんな典型的な財界エリートともいえる三木谷氏が、11年経団連を脱退。今年6月には「新経済連盟(新経連)」を立ち上げ、いわば反旗を翻したわけですが、これはなぜでしょうか?
須 大きなきっかけは、TBS買収の失敗でしょう。確かに三木谷は経団連という日本のインナーサークルに名前を連ねるようになりましたが、そこでの彼はしょせん、財界重鎮のペットのような立場でしかなかったわけです。その立場に甘んじるなら経団連も悪くはないのですが、彼の場合、財界でのし上がろうという野心があった。そのひとつの発露がTBSの買収だったと思います。三木谷からすれば通信と放送の融合というのは必然の流れですし、財界は味方になってくれると踏んでいた。ところが、結局最後はその財界からもハシゴを外されてしまった。