2011年12月にオープンした、代官山蔦屋書店。「大人のためのTSUTAYA」を標榜し、Tポイント拡大事業とは少々おもむきが異なる、CCCのもう一方の意欲的な事業として注目を集めている。
6月19日、Yahoo!ジャパン(以下、ヤフー)とカルチュア・コンビニエンス・クラブ(以下、CCC)が共同で記者会見を開き、両社がそれぞれ独自に行ってきたポイントプログラムを、会員IDをYahoo!JAPAN IDに、ポイントはTポイントへ統一することを発表した。運営は、CCCからTポイント事業を分割した新会社が行い、そこにヤフーも一部出資するという。以前から両者はヤフーポイントをTポイントに交換するなどの連携はしてきたが、今回はポイントを完全に一体化させるもので、ビジネス面でより深く踏み込んだものとなる。
ヤフーのアクティブID数は約2641万件、一方TSUTAYA会員を含むCCCのTポイントのアクティブ会員数は約4000万人。両者の会員を単純に足し合わせると約6600万となり、日本最大級の巨大なポイントネットワーク【1】が誕生することとなる。ポイントが集約されることでためやすくなるわけで、ユーザーからすれば一見、歓迎すべきことのようにも思える。しかし、セキュリティ関係者からは、プライバシーや個人情報保護の観点から、今回の事態を危惧する声が上がっている。というのも、CCCの個人情報に対する姿勢は「非常にアグレッシブ」であることで知られるからだ。
Tポイントの会員規約【2】には、その利用目的として、明確に「会員のライフスタイル分析のため」とうたっており、取得した個人情報を共有する範囲については「ポイントプログラム参加企業(TSUTAYA加盟店を含みます)」としている。
『爆速』
6月よりヤフー株式会社の社長に就任した宮坂学氏が掲げる、同社の新しいスローガン。「承認プロセスを簡略化して社内の意思決定スピードを早める」と威勢はいいが……。
読者の中には、「たかが買い物情報ではないか」と思う方もいるかもしれない。しかし、消費に関するデータは生活に深く根差すものであり、そこから年齢や性別、自宅や職場の地域、年収や趣味嗜好など、かなりの人物像が推定可能となる。これは、同じく昨今問題となっているグーグルやフェイスブックが収集しているネット上の個人情報よりも、より“危険な”情報とも考えられる。そしてこの情報が、すべてのTポイント加盟店に知れ渡るわけである。
もちろんこの規約自体は、個人情報保護法などの法令上問題のないものではある。とはいえ、こうした問題を抱えながら巨大化するCCCの姿勢には、疑問符もつきまとう。なればこそ、セキュリティ業界や法律関係者の間では、密かに「行儀が悪い」という評判が定着しつつあるのだ。