伝家の宝刀"社長本"か批判本ばかり……ビジネス書の世界でも人気・業績凋落中!

──本特集ではこれまで、ソニー・パナソニックのプロダクトや経営戦略に関する話題を取り扱ってきた。ここでは少し趣向を変えて、人気があるか、あるいは世間的に注目を集めているか否かのひとつの指標ともいえる、ビジネス書の世界での扱われ方を見ていきたい。

京都に鎮座するPHP研究所本社。ここから次々と松下幸之助本が生み出されているわけである。

 企業の経営戦略やプロダクト・サービスの開発ノウハウ、社長の経歴から仕事のありかたを学ぶ「企業モノ」は、ビジネス書の世界の一大ジャンル。当然、ソニーとパナソニックを取り扱ったものも多く刊行されているのだが、ソニー本とパナソニック本は大きく趣を異にしている。

 ソニーからグーグルの社長に転身した辻野晃一郎の『グーグルで必要なことは、みんなソニーが教えてくれた』(新潮社)や、ジャーナリスト・片山修『ストリンガー革命 ソニーの何を変えたのか』(祥伝社)、デジタルメディア評論家・麻倉怜士の『ソニーの革命児たち――「プレイステーション」世界制覇を仕掛けた男たちの発想と行動』(IDGコミュニケーションズ)など、ソニー本にはOBや外部の人間による、会社内部の蓄積や変革から学ぼうという、まさに「ザ・ビジネス書」という内容のものが多い。

 他方パナソニック本には、松下幸之助創設のPHP研究所、つまりは身内が刊行するものが多く、松下による『道をひらく』『社員心得帖』、松下と松下政経塾による『リーダーになる人に知っておいてほしいこと』と自著が目立つ。他社から刊行されたものについても、松下政経塾出身の実業家・小田全宏による松下哲学解説本(『1分間 松下幸之助 逆境を力に変える不屈の人生哲学77』ソフトバンククリエイティブ)や、PHP研究所代表取締役常務・佐藤悌二郎がまとめた松下講演録(『松下幸之助から未来のリーダーたちへ』アチーブメント出版)など、やはり創業者モノが散見される。

 ソニーの創業社長のひとり、盛田昭夫も『学歴無用論』(朝日文庫)や、ビジネス書ではないが石原慎太郎との共著『「NO」と言える日本─新日米関係の方策』(カッパホームズ)のようなベストセラーを持っているが、それにしても松下幸之助本の多さは突出している印象だ。いくら「経営の神様」とはいえ、持ち上げられすぎではないか。

「パナソニックって、ちょっとヘンな会社なんですよ」

 そう笑うのは、国内外の家電・デジタル機器メーカーに明るいジャーナリストの本田雅一氏だ。

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2024.11.22 UP DATE

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