──新聞やテレビのビジネス番組、はたまた経済誌などで繰り返し語られている、2社凋落の要因の数々。しかし、それらの分析は本当に妥当だといえるのか? 徹底検証!!
(写真/田中まこと)
【定説1】歴史的円高のせい?
【ANSWER】
実質レートで見れば決して円高ではない
円相場が対ドルで戦後最高値(1ドル=75円32銭)を更新し、対ユーロでも11年半ぶりの高値水準(1ユーロ=95円台)に達するという状況下では、定説の通り、いくらコスト削減に努めても、海外市場で日本製品は割高となり、売れにくくなるのは事実。その点では、予想をはるかに超える円高が両社の収益低迷につながったのは間違いない。
ただし、特集【2】でも解説したように両社の海外生産比率は高く、しかも物価の変動を考慮に入れた実質為替レートで見れば、今の水準は決して円高とはいえない。つまり、円高を業績悪化の主要因とするのは、山口正洋氏の言葉を借りれば、「経営手腕のなさを覆い隠すための大ウソ」なのである。
【定説2】サムスン電子に負けた?
【ANSWER】
韓国勢の好調はウォン安が主要因
韓国政府の全面支援で売上高11兆8000億円の巨大企業に成長したサムスン電子の活躍ぶりは目覚ましい。しかし山口氏は、「今はウォン安だから調子がいいだけで、テレビ事業に関しては赤字だし、給与水準も下がっており、抱えている問題はソニーやパナソニックと大差ない」と見る。定説に反し、サムスン電子の隆盛は一時的なものだというのだ。
また、日本のメーカー同様、製品の開発から組み立てまでを自社内で行うサムスン電子は、「現在世界の主流になりつつある水平分業モデル(製造を外注して自社ブランドで売る方法)への転換を図らない限り、日本のメーカーと同じ道をたどるだろう」と野口悠紀雄氏。そうした予測が現実となる日も遠くない!?